★以前、
> 『マリア様がみてる』のページに上のネタの完全版があります。
と書きましたが、かなり加筆修正しました。はっきり言うなら完全版じゃありませんでした。実際はもうちょっと続きます。
★こんなマリみては……いやじゃないかも 続続続・革命の日編
瞳子(祐巳さまと間違えて抱きついてしまった相手は、初めて会う祐巳さまの弟でした。
感情迷走状態のため、先輩たちには会いたくありませんでしたし。
祐巳さまの弟、祐麒をなんだかとっても気に入ってしまったので、引き止める母親を振りきり、今日も祐巳さまの家に向かうのでした)
瞳子「おじゃましまーす。祐麒はー?」
祐巳「……外。
近くのコンビニだからすぐ帰ってくるわ」
瞳子「祐巳さま……また"お使い"させてるのですか?」
祐巳「あら、姉の特権、弟の義務でしょ。
そんな事より私は、瞳子ちゃんがこのごろ毎日うちにやってくるワケの方が気になるけど」
瞳子「なんですか、その何か含みのあるような言い方は……。
ただ家にいると、先輩たちが来るかもしれないから、避難しに来てるだけじゃないですか」
祐巳「その割りには、やけに楽しそうだから。
てっきり他に何かお目当てがあって来ているのかと思ったわ」
瞳子「お目当てって……」
祐巳「祐麒。……でしょ。
うちに来て、私にあいさつするでもなく、真っ先に「祐麒は?」。
友達として立場ないわよね。私ったら」
瞳子「いや……だって……」
祐巳「そんなに気に入ったなら、いっそのことどう?
相手として考えてみるってのは」
瞳子「えっ」
瞳子(相手として?……って……)
祐巳「接触が平気なわけでしょ?
これで、かなりの重要条件クリアーしちゃってると思うし、やっかいな四人組の事だって、私で鍛えられてるから結構大丈夫なはずよ。
ゆくゆくは、医者の予定で将来安泰。
つきあう相手としては、最適な人材だと思うわ」
瞳子(……つきあう……祐麒とつきあう?)
瞳子「ど?……ってそりゃ、祐麒のことは気に入ってますし、抱きつくのも平気ですよ……。
でもそれは、似たような目にあったことで親近感がわいたからで……祐巳さまの弟だってこともありますし──」
瞳子(確かに祐麒なら、いろんな抵抗感がないし、大丈夫かもしれないけど……)
瞳子「私としては、仲間とか同志とか弟みたいとか、そんな風に思って……」
瞳子(──でも……)
瞳子「それに……やっぱり先輩にぶつけるのは可哀想だから。
いくら祐巳さまで耐性ついてるからって、対抗できるわけないです」
祐巳「そうかしら」
瞳子「そうですよ!
一対一ならともかく……相手はアクの強いお姉さまたちが四人もいるんですよ!?
あの人たち相手じゃかなわないと思うし、私のせいで祐麒がいたぶられて傷ついたりしたら嫌だわ……」
祐巳(このコったら……感情の種類はともかく、四人組より祐麒を選んでるじゃないの……)
瞳子「だいたい、私の相手とかそんな話、祐麒の方が嫌がるに決まってます!」
祐巳(いや、祐麒の方は、全然問題なしなんだけど)
瞳子「まったく、妙なこと言い出さないでください!
これで祐麒の事、変に意識してギクシャクしたらどうしてくれるんですか!!」
祐巳(そうしてくれたら思うつぼだわ)
瞳子「いいですか!
祐麒にもそんな変な事、絶対に言わないでくださいね!」
祐巳「はーいはい」
祐麒「え? オレに何?」
ビクゥッ
瞳子「ゆゆっ、祐麒おかえりっ。
何でもない、何でもないわ。
それより、何買ってきたの?」
祐麒「菓子とアイス」
祐巳「感情は向いているのは間違いないけど……。
まーだまだ、色っぽいものじゃないってとこか……。
気持ちが変わるような出来事が転がってないかしら。
まあ、あの四人が黙ってるわけないし、何かあるに決まってるわね」
瞳子「ねえ、せっかくの夏休みなんですから、みんなでどこか遊びに行きませんか」
祐巳「みんなって、瞳子ちゃんと私と祐麒の三人でってこと?」
瞳子「うんっ」
祐巳「ムリね」
瞳子「何で!?」
祐巳「だって考えてもみなさいよ。
思春期の男の子が、姉とその友達と一緒に出かけたいと思う?
たとえるなら瞳子ちゃんがお母さんと一緒に出かけるようなものよ?
瞳子ちゃん、行きたい?」
瞳子「……いや」
祐巳「ちなみに祐麒、一応聞くけど、私と一緒にお出かけしたい?」
祐麒「絶対やだ。はずかしいし、どーせ荷物持ちに使われるから」
祐巳「ほら、ムリでしょ?」
瞳子「ううーん」
祐巳「だからね。あなたたち二人で出かけたら?」
祐麒・瞳子「「えっ?」」
瞳子「……祐巳さま……何か企んでません?」
祐巳「やーね、そんなんじゃないわよ」
祐巳(あわよくば、とは思ってるけど)
祐巳「だって、私とだったらいつでも一緒に出かけられるけど。
祐麒とはそうじゃないでしょ?」
瞳子「あ……そうですよね……学校始まったら会えないわ……」
祐巳「それに瞳子ちゃんだって、たまには"女の子の外出"じゃなくて"男の子の外出"を楽しんでみるのもいいんじゃない?」
祐麒「オイ祐巳っ! 何考えてんだよ」
祐巳「何よ、せっかくデートのお膳立てしてあげたのに、不満なの?」
祐麒「不満じゃなくて、不安だよ。
オレにとって、そんな都合のいい事するなんて……」
祐巳「別に都合のいい事だけってわけでもないわ。
アンタには、強者共と渡り合ってもらわなきゃいけないから」
祐麒「強者共?」
祐巳「そう、瞳子ちゃんに近寄る男をことごとく追い払い。
自分達が彼女候補を打って出てる、山百合会の四人組。
瞳子ちゃんはね、その身の上が故に男性とのつきあいに対して複雑なわけよ。
それなのに、とんだバカのせいで男性恐怖症ぎみになっちゃって……。
今は、お姉さまたちさえも避けまくってる状態なの。
このままじゃ、マズイと思ってた所にアンタよ」
祐麒「え? オレ?」
祐巳「瞳子ちゃんは、何故か不思議と祐麒には警戒壁を張ってないの。
アンタをすごく気に入ってるみたいだし。
で、祐麒の方は、丁度いい事に瞳子ちゃんに好意を抱いてるわけでしょ。
だから、賭けてみようと思ったわけ。
祐麒が、お姉さまたちに対抗しつつ、瞳子ちゃんの情緒を開花させてくれるかもしれないって」
祐巳(弟みたいだと思われてるんだけど、黙っとくか)
祐巳「そんなわけで、瞳子ちゃんとデートしたら、手ごわい人たちが四人、黙っちゃいないと思うけど。
がんばってね!」
祐麒「手ごわいヤツが、四人も……」
祐麒(相手は薔薇さまだよな……対抗できるのか……オレ──)
……to be continued