★なぜなにマリみて“血のヴァレンタイン− My Bloody Valentine”(上)
乃梨子「ねえねえ、お姉さま………………!?」
志摩子「
( ゚д゚) ;y=‐ ;y=‐
(\/\/
」
乃梨子「うわっ!」
志摩子「
( ゚д゚) ;y=‐
(\/\
\ ;y=‐
」
乃梨子「ちょ、ちょっとお姉さま!?」
志摩子「あら? 乃梨たんどうしたの?」
乃梨子「どうしたの、じゃありませんよ! 何やってるんですか!」
志摩子「何って、
ガン=カタよ。
ー=y;―
|
(゚д゚ )
ー=y;_/| y |
」
乃梨子「わわわっ!? こっちに銃口を向けないでください! 大体なんですか? ガン=カタって?」
志摩子「よくぞ聞いてくれたわ。クラリック(聖職者)のみが使えるガン=カタは、(中略)数理的に導き出した科学分析が根底にあるのよ」
乃梨子「力説して頂いてありがたいのですが、映画に影響されすぎです」
志摩子「そうかしら?
ー=y; ( ゚д゚) ;y=‐
\/| y |\/
」
乃梨子「だから、いい加減に両手の
スプリングフィールドV12を下ろしてください!」
志摩子「あら? よく持っている銃がスプリングフィールドV12だって判ったわね?」
乃梨子「この前、家で
『フェイス/オフ』を一緒に見たときに『ジョン・ウー(・∀・)イイ』って言ってたじゃないですか。…………ってそういうことを言いに薔薇の館へ来たわけじゃないんですよ」
志摩子「なら何の用なの?」
乃梨子「新聞部からの企画で、今年もバレンタインイベントをすると聞いたのですが、その時にあげるプレゼントを何にしていいか判らなくて……」
志摩子「プレゼント? バレンタインカードじゃなくって?」
乃梨子「ええ。今年は趣向を凝らして
『つぼみのバレンタインプレゼント争奪 燃えろ!超人学園 GROOVE ON FIGHT』で勝ち残った……」
志摩子「ストップ! そこまででいいわ。大体判ったし、
話が進まないから。で、あげるプレゼントで困っているワケね」
乃梨子「そうなんです。急に言われたし、それにバレンタインデーでチョコとかあげたことなくって」
志摩子「家族にも?」
乃梨子「父には義理チョコをあげたことあるけど、それ以外には……」
志摩子「別に何でもいいんじゃない。どのみちお金は掛けられないんだから。家にあるものでも、好きな人からのプレゼントは嬉しいものよ」
乃梨子「仏像でも、ですか」
志摩子「…………。まあ、元々バレンタインデーは、1年365日ある
聖人の日の一つで、好きな人にチョコレートをあげる日でもなければ、愛を告白する日でもないけどね」
乃梨子「え? そうなんですか?」
志摩子「バレンタインデーの2月14日と翌日15日は、古代ローマの豊穣神
ルペルクスに感謝する祭、
ルペルカーリア祭があるの。山羊の皮を被った半裸の男性が竿を持って踊り周り、その竿が手に触れた女性は子宝に恵まれるそうよ。他にも未婚女性の名前を書いた紙を壷に入れて、翌日それを男性に引かせ、当たった女性とおつき合いするお祭りでもあるのよ」
乃梨子「そのルペルカーリア祭が、バレンタインデーの前身ということ?」
志摩子「厳密な意味ではないけどね。ローマ教皇
ユリウス1世によって、殉教者
ヴァレンティヌスを
てんかんの守護聖人として認め、亡くなった2月14日を
聖ヴァレンティヌスの日にしたの。古代ローマ帝
テオドシウス1世がキリスト教を国教とした後、長い年月の間にカーペンタリア祭などヨーロッパの民間信仰と結びついて
恋人の守護聖人という意味合いを持つようになったわ。それから、聖ヴァレンティヌスの日が、バレンタインカードをあげたり好きな人に愛を告白する日になったのよ」
乃梨子「( ・∀・)つ〃∩ ヘェー その殉教した聖ヴァレンティヌスって、聖人になるくらいですから、よほど立派なことをしたんですね」
志摩子「有名なところでは、こんな話があるわね。紀元268〜270年の古代ローマで、当時の
クラウディウス2世帝(本名:マルクス・アウレリウス・ヴァレリウス・クラウディウス・ゴティクス)が、強兵策として
兵士の結婚禁止令を出したわ。それでも結婚したいという兵士たちを、ヴァレンティヌス司祭が内緒で結婚させたの。それがクラウディウス2世帝にばれて、あえなく投獄。ヴァレンティヌス司祭は、その牢獄でも囚人たちに神の愛を説き、看守の娘で盲目だった目を見えるようにしたわ」
乃梨子「でも結局は、処刑されてしまうんですね」
志摩子「そうよ。ヴァレンティヌス司祭がどんなに民衆に対して奇跡を起こしても、
キリスト教徒迫害下にある当時のローマでは、何をやっても処刑なのよ」
乃梨子「じゃあ、ヴァレンティヌス司祭は、大っぴらに外を出歩けないじゃないですか」
志摩子「ところが、そうでもないのよ。ヴァレンティヌス司祭たちの布教で、ローマにおけるキリスト教の勢力は、少しずつ大きくなっていたの。クラウディウス2世帝を脅かすほどにね。ここからは、さっきとはまた別の聖ヴァレンティヌスのエピソードよ」
乃梨子「別のエピソード? 2つもあるんですか?」
志摩子「聖ヴァレンティヌスの話は諸説あって、最初に話したのはその内の一つ。これから話すのは、イタリア・ジェノバの大司教
ヤコブス・デ・ウォラギネが編纂したキリスト教聖人伝説集
『黄金伝説』を基にしたお話よ。聞きたい?」
乃梨子「いや、別に……」
志摩子「プニュ ( ´ー`)σ)Д`)←乃梨子
聞きたいわよね?」
乃梨子「き、聞きます。聞きますから……や、やめてください……」
志摩子「それでは聞かせましょう<( ̄^ ̄)>えへん
マクシミヌス・トラクス帝以降50年間のローマ帝国は、東方の
ペルシア、北方の
アレマンニ族とゴート族に攻め込まれ、その上帝国各地で内乱が起こり最低最悪の時代でした。皇帝は身分の高い男から選ばれるのではなく、卑賎な生まれの軍人から多く選ばれました。それぞれの皇帝の在位も短く、戦死や暗殺など多くが非業の死を遂げました。
衰退するローマ帝国市民の心の隙間を埋めるように、キリスト教は勢力を拡大していきました。そんな情勢の中、ヴァレンティヌス司祭は人気を集めていました。当時の皇帝クラウディウス2世帝が、これを黙って見てるわけがありません。
ある日、クラウディウス2世帝は、ヴァレンティヌスを宮殿に呼び出しました。そもそもローマ帝国には
ローマ神話の神々があって、古来伝統の神を崇拝せず、異教の神を崇拝する者はローマ帝国の敵なのです。質問をするクラウディウス2世に、ヴァレンティヌスは、真なる神イエス・キリストを信じ、愛をもって政治を行えるように祈ることを説きます。ヴァレンティヌスの説教に一瞬心を動かされたクラウディウス2世は、すぐに拷問や処刑を行わず、処置を一旦ローマ市長に預けました。
ヴァレンティヌスを預かったローマ市長は、裁判にかけることを前提にして身柄を
判事のアステリオの屋敷に連行しました。アステリオは無神論者で、キリスト教の布教を認めない保守派の裁判官だったのです。それを知っていたヴァレンティヌスは、意表をつくように邸宅へ入るなりイエス・キリストに祈りを捧げました。不快に思ったアステリオは、祈りを聞くなり語り始めました。
『喩えどんなに素晴らしい神がいても、嫌だと否定する人はいる。医者が薬を病気によって使い分けるように、救いの神も様々なものがあった良いわけだ。イエス・キリストだけが絶対の神なんて間違っていないか』
これにヴァレンティヌスは穏やかに反論します。
『貴方は、身分があり不自由もない健康なお人です。しかし、身分も低く死に直面している人には、そんな喩え話をしても意味がありません。こうしている間にも、救われたいと悩んでいる人々はいるのですから。
どこの家にも悩みはあります。そう思ったからこそ祈ったのです。神を否定することは、神を意識していることの裏返しです。心が不安なのです。それほど強く神を否定するということは、よほどの不安があるのではないですか』
これを聞いてアステリオは、自分が目論み失敗したことをキリストが始末できるか、と尋ねました。もちろんです、とヴァレンティヌスは答えました。
アステリオが語ったのは、概ねこんな内容です。
ある貴族の御曹司と婚約していたアステリオの娘は、挙式間近に重病に罹ってしまいました。何人もの医者から治療を受けましたが、視力の回復だけが悪化をたどり、ついには失明してしまいました。プライドの高い娘は、精神的にもかなり疲弊していて、時々発作が起こるのです。
アステリオの悩みを聞き、ヴァレンティヌスは娘に会うため屋敷の2階にある娘の部屋へ入りました。盲目の娘は、絶望のあまり自ら死ぬことを望んでいました。」
つづく