>>トップへ >>機動戦士ガンダム演説集+へ

ジオン・ズム・ダイクン『コントリズム』

 地球に居残る人々が、天を見上げて、天にある人の支配を成さんとするのは笑止である。宇宙移民者たちは余剰人口者として宇宙に追いやられたとするのが真実である。しかし、星々を身の周囲に置き、星々と共に寝食を共にした我々は、人として新しく生まれ変わりつつあることを自覚せずに入られない。
 エネルギーは、太陽が燃え尽きる五十億年先まで得ることができ、宇宙の空域は無限といえる。残るは、我々の認識力を拡大して、この広大無辺といえる宇宙を生活のための場所と思考すれば良いだけである。あの星々たちも、我々が生きてゆくために存在するものと考えられぬのだろうか? 神のあらせられる聖域と考えられるのは誤りであろう。
 我々は今や、宇宙の民としてこの厳しい環境の中で闘い抜き、世代を重ねてきた。そして、かつて人の歴史を築き上げてきた地球を見上げ、見下ろして思うことは何であろう?
 そう! あの緑なす地球、青く輝く地球こそ我々人類の発祥の星として永遠に守り続けなければならぬ聖地なのだ。一部のエリート意識に固まった人々の生活の場として残されたものではない。特権階級の象徴の場として汚されてはならない。これこそ、我々が宇宙の民として拡大した意識の力が判断させることなのである。
 が、地球から離れることのなかった人は、未だ大地を己の生きる場として存在するものと信じている。そして、汚し続けている。しかしその時代は終わったのである。
 地球こそ人類発祥の地、聖域としておかねばならぬ。一部の特権階級の持ち物ではない!
 しかるに、大地の人々は、天をあおいで人類全体を管理運営しようとする。それが人類を永遠に繁栄させるものではないことは自明であろう。
 サイドの自治権、コロニーの主権を持つことは、地球に存在する主権に拮抗させんがためのものではない。人類が一人残らず宇宙に翔び、地球圏そのものの主権をサイドの連合におき、地球を人類全体の聖地として守るべきなのだ。そのためのコロニーの拡大は容易である。
 かつて、キリスト者たちがその宗教の発祥の地をめぐって血なまぐさい争いを演じた歴史があるが、我々はその過ちを犯してならぬのである。
inserted by FC2 system