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クレイとパインフィールドの会話

パインフィールド
「防衛隊、つまり市民軍はこの輝点だ。各部隊は年齢、経験、以前の経歴ごとに編制されて色分けしている。例えば、この白いのは君たちの仲間が指揮しているが、幼年学校の生徒の部隊。こっちの赤いのは六十五歳以上の軍隊経験者の部隊だ。青いのは元ティターンズ、緑は軍隊経験者の青年部隊だ」
クレイ
「子供や老人まで動員しなければならないとは残念ですな」
パインフィールド
「エアーズ市民の総意なのだよ。この戦いは。我々、エアーズ市民は地球の為に尽くすことを父祖の代から教え込まれてきた。もし、ここで我々が負ければ、地球は地球人の物では無くなってしまう。それを全員が知っているのだ。それに、残念ながら職業軍人だけの戦争はは旧暦十七世紀に終わってしまったのだ。この兵力でどこまで持ちこたえられるかは分らん。しかし、我々がここで倒れても他の月面都市群がその志を継いでくれる筈だ。その為の捨石となる覚悟は老若男女を問わず持っている。それがエアーズの魂なのだ。我々が倒れる前に他の都市から援軍がくる可能性も有るしな……」
クレイ
「もしその思惑通りに行かねば、我々もお供しましょう。もとより閣下もそのお覚悟とお見受け致しました」
パインフィールド
「気持ちは嬉しいが、そうは行かんよ」
クレイ
「なぜでしょうか?」
パインフィールド
「この戦いはエアーズ市民の総意だが、先のコロニーレーザー攻防戦の時と言い、市民たちをここまで巻き込んでしまったのは私の責任だからね。確かに、滅びるのはエアーズ市の宿命なのかも知れん。宇宙に純粋な地球の領土が有るような物だからね。宇宙人と地球人の差別は決定的な物だ。我々にとっては地球そのものが宗教なのだ。我々はこの土地を、地球の支配を離れる事は出来ないのだ。宇宙民の言い方に変えれば、エアーズ市は旧世代の地球連邦政府が行なった宇宙政策の墓標だ。その墓守は私でなければならんのだ。しかし、諸君は違う。諸君は今の連邦政府の政策への疑問符なのだ。ここで滅びてはいかん。最後まで彼らに痛い思いをさせてやるのだ。我々がなぜ滅びたのかを彼らに伝えるのは諸君の仕事なのだ。ここで我々と共に月の土へ還える事は許さん。諸君が倒れるときは地球の上でなければならんのだ。
 そう。確かにエアーズ市が滅びるのは、今の時代にあっては宿命なのかも知れんだろう。宇宙に純粋な地球の領土があるようなものだからな。宇宙民と地球人の差別は決定的な物だ。それはニュータイプという概念で、人間同士が互いの考えていることを過不足無く理解し合えるようになったとしてもだ。正直言って君の月面都市連合構想が成功したとしても、数年もしないうちに、今度は宇宙民狩りの人々が我々と同じ様な悲劇を繰り返すことになるだろう。異なった思想を容認する事は出来ないからな。もちろん私も市民たちも、自分たちにこそ大儀が有ると信じているし、正しい物の考え方をしていると思っている。だが、宇宙民たちもまた、自分たちに大儀が有ると信じている。果たしてどちらが正しいのか、その審判を下すのは歴史だけだ」
クレイ
「分りました。しかし、我々はここで必ず大義を貫き通して見せます。市長、月面都市連合は絶対に成立します」
パインフィールド
「そうありたいものだな。もしもここが滅びた場合だが……」
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