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クレイとパインフィールドの会話

オペレーター
「フォン・ブラウン市から地球連邦政府への抗議声明を傍受しました!」
パインフィールド
「何っ? それは実力行使を伴う抗議か?」
オペレーター
「駄目です。他の都市と同じく経済制裁勧告です。抗議はしても、積極的に味方をする気は無いようです」
パインフィールド
「やはり駄目だったか……。クレイ大尉、ご苦労だった。君の構想を実現するほど月面人の、いや宇宙民の意識は高くない。自治だ独立だと言ってみても、政治的にも経済的にもやはり地球に依存しなければならないのだ。所詮は地球の顔色を覗う様なマネをする。まだ人間は地球無しでは生きられないのだよ。地球を制した者がやはり正義なのだ。私はこれを確認したかった。嬉しくも、悲しくもある。こんなことを理解するためにしては、払った犠牲は大きすぎるかも知れんがね……」
クレイ
「決して宇宙民の意識が地球人の人間より高いと言う訳ではありませんよ。元々、どうあがいたところで我々は人間なのですから。意識の高さを論じるなら、大地に足を付けて生活している人間の方が高いでしょう。なぜなら、ニュータイプとは、宇宙に憧れた地球人が宇宙に住むようになって出てきた概念だからです。所詮、その大元は地球人の意識に他ならないのです。ところがいざ宇宙に住むようになってみると、今度は宇宙に住んでいるという事だけでニュータイプになった様な気がして、それ以上のことはしなくなるのです。真に意識の変革を待ち望み、変わろうと努力しているのは重力下の人間の方なんですよ。その努力をしていないのは一部の政治家ぐらいなものです。ところが重力下の環境ではニュータイプは生まれないと宇宙民は言っています。重力井戸に魂を縛られて安穏に堕した人間はニュータイプにはなれない、と。それは地球の一部の人間であるにも拘わらずです。もちろん逆差別に他なりません。しかし、私は現在の宇宙民の方こそ。更にもう一段階上に上がることを放棄した連中なのだと考えます。我々は人類の変革を唱えだした連中に、再び考えることをさせる、その役割を担っているのです。だからこそ滅びなければならない。人類の踏み台として……」
パインフィールド
「君はそこまで考えていたのか……。確かに宇宙民は地球を単に人間の意識の物差として捉えているようだ。地球は古い、と。しかしこれは逆差別だよ。地球に対する羨望の裏返しだ。地球に生まれながらも長い間、地球を見ることが、帰ることが出来ない我々の父祖や君達の様な人間と違って、地球が羨ましいとストレートに言えない宇宙民たちのな。急激に革新する必要が必要がどこにあろう? 宇宙民は“変わる”と“変える”の違いが分っていないのだ。我々は“変える”のではなく、“変わる”ことを目指さねばならんのに。地球対宇宙、重力対無重力、限定と開放。何と幼稚な比較構造なのか! 宇宙民の意識の狭量さは、いずれ新たな反発を生むだろう。“変える”ことは短い時間で可能だが、“変わる”のには時間が必要なのだ。それに気が付いた時に連中がどんな対応をするのか、どんな人類の生活圏を築いて行くのかを私はあの世から嘲笑ってやろう。 今までこれだけの人間の生き血を吸ってきた、宇宙に生まれた連中をな!」
クレイ
「ふざけるんじゃない、と?  我々は未だ死んではいません。最後の最後まで戦い抜きますよ、連中に痛い思いをさせてやります」
パインフィールド
「その為には、この抱囲を脱出した方が良い。例の計画を実行し給え。我々は援助を惜しまない」
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