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マフティ・ナビーユ・エリン(ハサウェイ)演説

 自分が、マフティー・ナビーユ・エリンであります。今日まで、自分を中心とした組織が、地球においでになった連邦政府の閣僚を粛正してまいりました。そして、そのたびに、なぜ、こんな暗殺団まがいのことをしてきたのかを、説明してきました。それについては、かなりの世論の支持を得ていることは、連邦政府の関係者もご存知のはずです。にも関わらず、連邦政府は反省の色もみせずに、ここアデレードでは、さらに、地球汚染を再開するような法案の成立をもくろんでいます。
 本格的な閣議は、あすから始まり、マフティー掃討のためには、どのような支援も行われるであろうという合意がなされます。しかし、それは連邦政府の関心が、われわれにむけられているというていどの問題でしかありませんから、それについては糾弾はいたしません。テロは、あらゆるケースであろうとも、許されるものではないからです。
 我々はマフティーの名前のもとで、クスィー・ガンダムとともに、連邦政府と戦うのは、組織におぼれた人びとを粛正する目的があるからです。これが理想の戦いでないのは知っているのですが、宇宙移民法にあるとおり、全ての人びとが宇宙に出なければ、地球は、本当に浄化されることはありません。現在、人類は、宇宙で平等に暮らしていけるのです。オエンベリでは、地球に不法居住しようとする人びとが、軍を組織しようとした非はあります。しかし、それを力ずくで排除したのは、幾多の種を絶滅させた旧世紀人のやり方と同じではないでしょうか? 問題は、新しい差別を発生させて、連邦政府にしたがう者のみが、正義であるという一方的なインテリジェンスなのです。
 今回のアデレート会議が、この連邦政府の差別意識を合法化するための会議であることは、どれだけの方がご存知でしょうか? アデレード会議二日目の議題の中に、地球保全地区についての連邦政府調査権の修正という議案がありますが、これはとんでもない悪法なのです。
 この第二十三条の追加項目にある文章は、官僚の作文なので意訳しますが、例えば、連邦政府からの閣僚からの要請があれば、オーストラリア大陸に土地を所有している方々からも、任意にそれらの土地を提供しなければならないことになります。もちろん正規の居住許可を持っていらっしゃる方からでも、土地を取り上げることができます。代償は、収容する土地と同じ面積の土地を所有者の指定するスペース・コロニーに請求することができるというものです。
 これらの法案が、アデレードで可決されれば、地球の自然が復活する芽も摘みとることになります。それでは、人類が苦難を乗り越えてスペース・コロニーに移住した意味がなくなるのです。考えてみてください。特権階級の数万の人びとが、地球にもどりたいための法案が可決されれば、地球にもどる人びとが、数十倍になるのは簡単なことなのです。もう一度思い出してください。旧世紀の最後の一世紀だけで急増した人類が、地球そのものにも、瀕死の重傷をおわせたのです。しかも、スペース・コロニー移民が始まって一世紀もたっていない現在、地球の海は、まだまだ化学薬品が残留しているのです。雨にも、まだ化学物質が混入したままなのです。まして、植物と小さい生物たちの命は、じゅうぶんに復活していません……それは何をいみするか? そうです。地球には、まだ人類はもどってはならないということです。なのに、連邦政府は、人類が地球にもどれる準備をはじめて、その前に、自分たちの既得権を手に入れようとしているのです。それが、このアデレードで行われようとしている会議の真相なのです。
 で、中央閣僚会議が、これらの法案を廃棄しない限り、閣僚たちの粛正をここで実行することを宣言します。この放送をきけば、関係者はアデレートを一斉に逃げるかもしれませんが、これ以後、アデレート周辺から逃亡するものは、無差別に粛正の対象にします。 しかし、我々は一般人をまきぞえにするつもりはありませんので、関係者以外は、これから二時間の間に、アデレートから待避してください。その後、アデレートから出ようとする乗り物と人は、全て我々のターゲットになるものと思っていただきます。
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