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ディアナ・ソレル(キエル)演説(ハルキノベルス版)

 すべての命をわかちあう、すべての人たちよ。武器を大地に置いて、私の話を聞いてください。
 かつて、私たちの母なるこの地球は、人が住むことさえ許されないほどに荒廃した惑星になりました。そのような過酷な時代があったと『黒歴史』は語っております。なのに、地球の皆様方はそれを忘れております。なぜでしょうか?
 人間には、もっとも辛い体験や記憶は、忘れてしまうという悲しい性がございます。悲惨すぎる過去を背負ったまま、生き続けることはできないのです。だから忘れようとした。過った歴史に封印をして、再生にすべての力を費やしてきたのです。
 私たちムーンレィスは、地球が再び住めるようになるまで月で暮らしました。人類の記憶を残すために、新しい人の再生に手を貸すためにです。そして今日、この地球は二千年に及ぶ歴史を刻んで、再び反映を築き上げることができるようになったのです。
 地球は完全と言えないまでも、再生いたしております。ならば、ムーンレィスも地球に帰還して、地球の再生と、二度と過った歴史を刻まないように手を貸したいのです。
 宇宙に進出した過去の歴史を、地球の人々は天の神々の物語にすることで、再生の力を身につけたのです。悲惨で辛すぎる過去の記憶を、歴史そのものを書き換えることで忘れようとしたのです。
 それは、人という生体に宿る命の力が、文明と引き換えにしてでも生き続けようとした生命力が、させたことでありましょう。そのような歴史を踏んで再生した今、互いの歴史を否定して争い続けることこそ愚かです。
 私たちは、この目も鼻も唇も同じです。この身体も、地球人、ムーンレィスの違いはありません。私たちは同じ人類なのです。
 ですから、私はここで、ムーンレィスのための国家をサンベルト一帯に建設するのはやめます。そして、再度、和平交渉を再開されますことを、アメリア大陸の人々にお願い申し上げます。
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