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ディアナ・ソレル(キエル)演説

 勇敢なる前衛、ディアナ・カウンター全将兵に告げる。私はディアナ・ソレルです。
 現在、地球の全権大使、グエン・サード・ラインフォード卿の好意に甘えて、地球の戦艦ウィルゲムに座乗しています。いま地球でなにが起こっているかは、すでに周知のことでありましょう。地球の戦友を目論むフィル・アッカマン少佐が、私を放逐し、第一次降下部隊を私物化して、地球の軍隊であるミリシャと無益な闘争を続けているのです。地球に眠る過去の兵器を発掘、運用して行われる戦闘は、再生したばかりの大地に容赦なく傷つけ、地球を再び人の住めない惑星にしてしまうかも知れない、と危惧されるレベルにまで達しています。
 私は、フィル少佐を背後で操る人物がアグリッパ・メンテナー卿であると信じさせられ、グエン卿の協力を得て月に戻ってまいりました。しかしアグリッパ卿と会談した結果、それらはすべてフィル少佐が捏造した周到な嘘、全くの事実無根であったと判断しました。アグリッパ卿が私の暗殺を企図したという事実はありません。むしろ私の留守をよく守り、月の管理人の務めを実直に果たしてくれています。今後もムーンレィスの長老として、私のよき相談役を務めてくださるでしょう。
 すべてはフィル少佐と、少佐と結託する一部の執政官が企てたことなのです。私はこれより全艦対を率いて地球に向かい、フィル少佐の悪しき行動を正します。が、それは単に叛乱部隊の鎮圧を意味するのではありません。地球側にも、我々の帰還を認めようとせず、いたずらに戦渦を拡大する者たちがおります。彼ら頑迷なる者たちは、力をもってしてでも歴史の真実を教え諭す。それがディアナ・カウンターの任務であり、今回の出征の真の目的です。
 幸い、私はグエン卿という聡明かつ勇敢な協力者を得ることができました。旧来の封建的制度をあらため、グエン卿のような人物を中心とする民主社会が構築できれば、地球の体質もまた変わるでしょう。二千年をはるかに超える時間を経て、地球はもとの青さを取り戻し、私たち人類も十分に罪を贖いました。これから第二の人類の繁栄が始まるのです。旧世界の失敗を反面教師として、我々は今度こそ永遠の理想郷を地球圏に構築してゆくことでしょう。
 無論、その道は平坦ではありません。旧態依然とした封建制度にしがみつく者たち、旧人類の闘争本能を復活させた者たちは、抵抗をあきらめず、あくまで流血による解決を求めるでしょう。しかし彼らが人類の繁栄を阻む障害である限り、我々はたとえ同胞であっても打ち破ることをためらってはなりません。その血を浴びることを恐れてはなりません。これは人類が真に復興を成し遂げるための聖戦なのです。
 ゆえに、文明の守人、ムーンレィスの女王として命じます。人類の発展を阻むものは、ミリシャであれムーンレィスであれ、これを排除する。全艦、地球に向けて発進!
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