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ホイットモア大統領演説

 おはよう、諸君。
 ……あと一時間たらずで、諸君ら115名は、北へ向かって飛びたち、史上空前の強敵と交戦する。時を同じくして、世界各地のパイロットたちも、他の35隻の宇宙船に対し同様の攻撃を行う手はずだ。諸君がまもなく赴く戦いは、人類史上最大の空戦となるだろう……そう、人類史上最大の……。
 人類……この言葉は、今日、我々全員にとって、新たな意味を持つ。地球に対する今回の暴虐行為に少しでも意味があるのなら、それは我々人類が共有するものの大きさに気づかせてくれた、という点につきるだろう。人類同士の無数の差異など瑣末事でしかないことを痛感させ、共通の利益というものの意味を実感させてくれた。そしてさらに、歴史の方向を変え、人間であることがどういうことであるかをも定義しなおした。今日この時より、世界の諸民族と諸国家がいかに深く相互に依存しあっているかを、我々は決して忘れることがないだろう。
 今日が七月四日、アメリカの独立記念日であることに、私は皮肉を感じずに入られない。 運命のいたずらというべきか、この日は再び、自由への大いなる戦いの始まりを記念する日になろうとしている。しかし、今回我々が勝ち取ろうとしているものは、圧制、迫害、弾圧からの自由などよりも、ずっと基本的なものだ。敵は我々を殲滅しない限り、決して満足しない。我々は自らの生きる権利、自らの存続を懸けて戦うのだ。
 一時間足らずのうちに、我々は恐るべき敵に……かつて遭遇したことのない強力無比の大敵に戦いを挑む。口先だけの約束をするつもりはない。勝てる見込みがあるという保証は一切できない。しかし、意義のある戦いがあるとしたら、これこそはその戦いだ。
 いま、この危急存亡の時にあって、こうして周りを見回してみると……諸君のような勇者たちに恵まれて、自分はつくづく幸せ者だと思う。言葉本来の意味で、諸君は真の愛国者と呼ばれるにふさわしい。諸君は故国を愛し、その国を護り抜くために、自らの才能と技術を差し出し、命すら投げ出す覚悟を固めている。諸君と共に戦列に立てることを、私は心から誇りに思う。
 さあ、諸君、勝とうが負けようが、共に叫ぼうではないか。我々は決して粛然と闇に消えたりはしない!抵抗もせずに滅びてたまるものか! 当然の権利を護り抜くため、勇猛果敢に戦い、最期の時であっても、昂然とこうべを揚げていよう!
 そして、もし戦いに勝利したなら……何らかの奇跡により、一見不可能事に見えるこの戦いに勝ち抜けたなら……それは想像できる限り最も輝かしい勝利となる。七月四日はアメリカの祝日だけでなく、地球上のあらゆる国家が肩を組み、こう叫ぶ日となるだろう。“我々は決して従容と死を受け入れたりはしない! 我々は生き続ける! 生き続けてみせる!”と。その日こそ、我々は……。
 真の独立記念日を祝うのだ!
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