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『こんなマリみてはいやだ BLACK LAGOON編 “Rasta Blasta”』

女生徒「ま、待って! わかった! 喋るよ、喋るからさ! あっあっ、あの剣道部員はここにゃいねえんだ! 田沼ちさとなんかと一緒に先週ここを出た!! 信じてくれ! 行き先は○○市のリリアン女学園だ。あたしが……あたしが知ってんのはここまでだ! 木刀を降ろしてくれ……おい! よせ!!」

売店員「コーヒーはねえよ」
由乃「ではお水を」
売店員「ここはミルクホールだ。ミルクを頼め、アホたれ」
由乃「リリアンには今日、着いたばかりでして。右も左もわかりませんの。中学の友人を頼って来たのですが……。事務所はどちらにございますか、ご存じありません?」
売店員「嬢ちゃん、ここが学校案内所や職業斡旋所に見えんのか?」
由乃「いえ」
ちさと「ペプシ一本」
売店員「なんだ、禁酒同盟にでも入ったか?」
ちさと「あたしが飲むんじゃねえよ、この馬鹿。おい、何見てやがんだよ。何か愉快なものでもあたしの顔についてるか? あん?」
由乃「…………いえ、別に」
ちさと「そんなら正面向いてミルク飲んでろ、くそったれ」
売店員「なんだよちさと。えらくご機嫌斜めじゃねえかよ、どうしたんだい?」
ちさと「知ったことかよ、バカッタレ」

ビキッ

ちさと「んだよ、態度の悪いアマだぜ」

バキンッ

由乃「……ひびが入っていたようですわ。取り替えて、いただけますか?」

ドンッ

ちさと「これで満足か? 次にワガママこきやがったら、ぶっ殺すぞ」
三奈子「貴女ね、お嬢様の態度じゃないわ。貴女だって妹の時分はあったしょう?」
ちさと「そんならベビーシッター代よこせよ。面白くねえ! したらよ、小便の世話だってしてやらぁ」
真美「もういいでしょ!」
ちさと「なんだよ、お前まで。この後輩のお姉さまにでも立候補するつもりかい? 確かに新聞部やってる女よりゃ、生ッ白い顔さらして生徒会でもやってるほうがお似合いだな」
真美「ああそうかい? 悪うございましたねえ」
ちさと「『お姉さま、F&Mのダージリンエクストラはいかがでごさいますか?』とか言ってりゃいいんだろう。『マリア様がみてる』みてぇによ! 何十人もファンに囲まれてよ、いい御身分だなぁまったくよ!」
真美「あんたいいかげんに……!」
菜々「ファンなんて一人しかいないよ。由乃って名前の妹が一人。彼女はお姉さまのくせに掃除も家事も下手なんだ。でも──由乃さまはお前なんかより、よっぽど強いぞ」
ちさと「ぷっ、ウシャウシャシャ。言うに事欠いてそれかよ! 小卓子(ティーポイ)でも投げてくるんじゃねぇだろうなぁ。オイ! ゲヒャヒャヒャ。 そいつがマジならよ、ルート66をマリア様がチョッパー乗ってぶっ飛ばしてた、つっても信じるぜ!!」
真美「……君、戦ってるところを見たのかい?」
菜々「ないよ。でも……思い当たることがあるのさ」

バァン!!

菜々「私はよく腕相撲をしてあそんでた。勝負はいつも由乃さまの負けだったよ」

ザッ

女生徒A「あんた、手前に用がある。おかしなセーラー服姿の女が、朝からずっと剣道部員のことを嗅ぎ回ってると聞いたんでな。部員総出でお出迎えに上がったってわけだがよ」

菜々「あの日も私は、腕相撲に付き合ってもらってた。私は全く気が付かなかったけれど、道場破りの連中が敷地に入って悪さしようとしていたのさ」

女生徒A「テレビのアニメーションでしか見れねえような、イカれた恰好だ。そんな服着て学園中歩いてりゃ、どんな馬鹿でも記憶に残らぁ。何者だ? いったい何が目的だ?」

菜々「結局あとで聞いたんだけど、由乃さまだけは気づいてたみたいなんだ。連中が入り込んだのを見つけた瞬間彼女は固まり──私はいつもと同じ力で彼女を倒そうとしてたのに、腕はまるで鋼のようだった」

ガチャ

菜々「その時わかった。由乃さまはわざと負けてる。弱い妹のふりをしなきゃいけない理由があったんだって、ね」

ガタッ

由乃「……見付けていただくのがこちらの本意にございます。リリアン女学園剣道部の方々でございますね? 私めは有馬菜々の姉にございます。お聞きしたいことがいくつか。……失礼ながら──少々、御無礼を働くことになるかと。なお、今しがたとても不愉快な出来事がございまして。手加減のほうはできかねますので、一つご容赦を」
女生徒A「……ははっ。聞いたかよ、おい。御無礼を働くとよこのアマ! お笑いだぜ! なあ! どうするってんだよ姉ちゃん!?」

チャカッ

由乃「──では、ご堪能くださいまし」

バンッ

菜々「…………よ…………」
真美「?」
菜々「由乃さまだ」
ちさと・真美・三奈子・蔦子「「「「何ぃぃぃぃぃぃぃ!!」」」」

祐巳「お姉さま、こちらが有馬家の資料であります。傾き加減の剣道道場経営、妻とは婿養子。写っているのは当主と一人娘の菜々、そして菜々のお姉さまであります」
祥子「…………良くないわ、こいつの目は。気に入らない。祐巳、こいつの目を見なさい。何か気付かない?」
祐巳「…………兵隊ですね」
祥子「正解だわ、祐巳。しかも、それだけじゃない。こいつはとびきりの、狂犬だわ」

ドンッ

女生徒A「こ……こぉぉおおのくそったれぇええぇぇ!! てめえらぁ! かまくこたあねえ! ぶっ殺せ!!」

シャカッ

祐巳「如何ようにでも? おできになるなら」

ヒュッ

バシャ

バンッ

女生徒A「うぉおぉおおおお!」
女生徒B「どうなってやがんだ、クソッ!!」
女生徒C「防刃繊維かちくしょう!!」
女生徒D「ダメだ姉貴!! 野島部長に連絡を!!」

ドカンッ

ババンッ

三奈子「連中がやり合っているのは、好都合だわ。この間にずらがるってのは、どうよ?」
真美「ずらがるってどこへ?」
三奈子「ほとぼりがさめるまで、クラブハウスでお茶でもしてりゃいい。飲みついでに斬り合いなんぞ真っ平だ、壬生義士伝じゃあるまいしよ」
ちさと「なあなあ、斬るのか斬らねえのかさっさと決めてくれ」
蔦子「ちさとはいいこと言った。さっさとしよう。できれば斬らないほうがいい」
真美「同感」
三奈子「菜々は置いていく、地雷(クレイモア)抱えて散歩するのは嫌だからな」
ちさと「金んなるぜ三奈子」
菜々「……っ!!」
三奈子「こいつはマネーなんかじゃないわ。こいつはここに置いていく。オーケイ?」
真美「菜々ちゃん! いいかい、戦闘が収まるまで、ここから動いちゃダメだ。静かになったらここを出て──あのお姉さまとお家に帰るんだ。元気でな」
菜々「わ、私、知らなかったんだ由乃さまがあんなに……人を殺せるような人じゃないんだ、なのに……どうして……」
三奈子「真美!」
真美「…………」
三奈子「頭上げるなよ。入り口についたら走るぞ」
売店員「……ちっ……ちさと!! てめぇのダチ……」
ちさと「ダチじゃねえっつってんだろ、おばさん!! このタコ、知らねぇよ!」

ぴく

ぴく

ピタ

女生徒A「ちさと!? おめえ、どうしてここに!? 頼んでた後輩はどうした! 向こうにゃ行ってねぇのかよ、おい!!」
由乃「菜々……」
菜々「お、お姉さま」
由乃「こんな所にいらしたのですね、菜々。お父さまも大変、心配なさっておられますよ」
菜々「…………」
由乃「……怖がられるのも仕方ありませんね……。理由はいずれご説明いたします。由乃は所用が残っております由、少々お待ちを。……その方々は?」
三奈子「やばい、目が合った」
菜々「お姉さま! 待って!!」
ちさと「下がりなよメイド。ここにいる全員が、死んでるよりゃ生きているほうが好きなはずだぜ。てめえだってそうだろう?」
真美「バカよせ、それじゃ悪役だ!!」
ちさと「うるせえ! 無理な斬り合いをしなけりゃ、おめえの妹は五体満足で家に帰れる。床におミソをぶち撒かずにな。わかるか?」
由乃「……考えております」
女生徒A「てめえら! 何勝手に話進めてやがる!! こっちの話は終わってねぇんだぞ!」

ヒュッ

ドカン

由乃「……御意向には添いかねます。妹には五体満足でお戻りいただきますが──島津家の家訓を守り、仕事をさせていただきますわ。
 Una vendicion los vivos.
 (生者のために施しを、)
 Una rama de flor por los muertos.
 (死者のためには花束を、)
 Con una espode por la justicla,
 (正義のために剣を持ち、)
 Un castigo de muerta para los malwados.
 (悪漢共には死の制裁を。)
 Acl llegarmos en elatar de los santos.
 (しかして我ら聖者の列に加わらん。)」

ザッ

由乃「サンタ・マリアの名に誓い、すべての不義に鉄槌を」

ガチャ

ド ド ド

ちさと「!」

バンッ

真美「ちさと!! ちさと! しっかりしろおい! ちさと! ちさと!」
蔦子「突きが肩をえぐっただけだ。音速に近い打撃を受けたおかげで──脳震盪起こしてる」
三奈子「無茶な女だ。花寺学院の攻防戦がピクニックに見えるわ。クソ!!」

ヒュンッ

ドカッ

ドォンッ

三奈子「逃げるぞ! 走れ!」

ぐっ!

菜々「……連れてって」

ばっっ

由乃「菜々!!」
女生徒A「待ちやがれっ!! そうだ。思い出したぜ、手前のさっきの科白をよ……そうだ。“サンタ・マリアの名に誓い”……どうりで腕が立つわけだよ。“ロサ・フェティダの猟犬”。まさかてめぇが生きてるとはな……マリア様でも気がつくめぇよ! てめぇが心臓の手術で休学してからの数ヶ月──1年から3年までがてめぇを追っかけ回してるんだ!! 運動部はてめぇの姉妹解消に40万円の賞金まで用意してる。“生死を問わず(デッド・オア・アライヴ)”でよ。さんざ汚れ仕事を片付けてきたんだ、知られちゃ困ることだらけだろ? ハハハハハハハッ!! 私にもやっとツキが回ってきたわけだ!! てめぇの首を持って帰りゃあ私も山百合会の若頭だぜぇ!!」
由乃「…………生かしておく理由が消えました。わたくし、これでおいとまいたしますが──これをぜひ、お受け取り下さいまし。では皆様、御機嫌よう」

ゴロン ゴトン ゴト ゴト

キン キン キン

ゴロロロロ

女生徒A「……逃げっ……」

ドォォン

蔦子「今のうちだ! 早く!」

ゴォォォ

三奈子「……マジなの。信じられない」

ザッ

真美「信じるさ。あれは未来から来た殺人ロボットだ。映画と違うのはシュワルツネッガーじゃないことだけだろ?」

ゴォォォォォ

三奈子「……おもしろくもないし、笑えないよ」

祥子「状況を」
瞳子『“ミルクホール”は半壊。“猟犬”、新聞部員は共に消失(ロスト)』
祥子「そこを離れるな瞳子、情報収集を継続せよ」
瞳子『了解。おばさんにはなんと?』
祥子「“心配無用”と伝えなさい。部隊を連れて薔薇の館へ向かう、定時報告を10分おきに。以上よ」
瞳子『了解』
祐巳「お姉さま。ひさしぶりに戦争ですか? 生徒会ごっこは体が鈍っていけませんね」
祥子「さあな。用心に越したことはないでしょう。新聞部……いや、三奈子にはでかい借りがある。放っとくワケにもいくまいよ。行こうか同志諸君、撃鉄を起こせ!」

三奈子「……………………。信心深え甲斐もあるってもんね。生きてる奴は返事しなさい。こっちはなんとか全員無事よ。ちさとは?」
真美「まだ、気を失ってる。そっちはー……」
蔦子「……あの女、いったいなんでできてるんだ?」

ピクッ

ちさと「いてぇえええぇええああ」

ガバッ

ちさと「くそっ! くそっ! 痛えクソ、あのバカアマ、チクショウ。殺す殺す絶対殺すっ! あのクソアマどうなった? ええ? どうなった? くたばったか? あのクソったれ、くたばったのかよおい!」
三奈子「喜べ、カッチリ生きてる」

バンッ

真美「ちさと待……」
ちさと「真美。あたしは今テールライト並みに真っ赤っかになる寸前なんだ。そいつが灯っちまったが最後、お前のケツの穴を増やす時にも警告はしてやれねえ。わ、わ、わかるか? わかるだろう? あたしにぶち込んだ木刀はな、あのアマが手前に尻にぶち込んだどんな物よりいっとう高いもんについてんだよ。そいつを嫌ってほど、思い知らせてやりにいく」

ザッ

ザッ

ちさと「……抜けよセニョリータ。それともブルっちまってんのかい?」
由乃「怯えずとも、よろしゅうございますわ」

ブツン

ドンッ

ドドドドドドン

バ バン バ バン

ガッ

ジャ ガッ

祥子「動くな! その辺でやめておいたらいかが? お二人さん。 一文の得にもならないわ。 いいことを教えてあげる、メイドさん。私たち「山百合会」は最初から運動部と戦争をするつもりでいたの。剣道部の受け持ちは私の役目だったけど……あなたのおかげで手間が省けたわ。今頃は、運動部のクラブハウスも──壊滅しているはずよ?」
蔦子「リリアンで一番おっかいない女の上位三人だ」
三奈子「グラウンド・ゼロって気分だわ」
祥子「だからすべてはノー・プロブレム。菜々さんが掠われた件も全部チャラ。戦う理由はなくってよ」
ちさと「関係ねぇだろ」
由乃「……ですわ」
祥子「あらそう?」

ゴゴ ゴゴッ

祥子「カン違いしないでね? お願いじゃないの、命令」
真美「な、菜々ちゃん!」
菜々「……由乃さま。もういいんだよ、由乃さま。私は、このとおりケガもしてないよ? ねえ、もう帰ろう? わ、私はもう……剣を持ってる由乃さまなんて見たくないんだ」
祥子「同感だわ菜々さん。でも……。“猟犬”の方はどうかしら?」
菜々「“猟犬”……?」
祥子「おや。菜々さんはご存じないのね、こいつは──」
由乃「だまれえっ!!」
祥子「静かにしてろ、“猟犬”。こいつはね、黄薔薇のつぼみなんかじゃないの。“ロサ・フェティダの猟犬”、島津由乃。イタリアで暗殺訓練を受けた社会福祉公社の特殊諜報員、誘拐と殺人容疑で国際指名手配中。ローマでマスカール下院議員暗殺にも関与を疑われている筋金入りの暗殺者よ」
菜々「……由乃さま……本当に?」
由乃「…………菜々を……菜々を欺くつもりはございませんでした。しかしお姉さま……世の中には知らずともよろしいことというものがございます……。……真実なのですよ、菜々。私は──私は信じていたのですよ、いつか来る革命の朝を。そのために私は、ありとあらゆる所で戦い、殺しました。政治家、企業家、反革命思想の教員、女や子供もです。いくつもの夜を血に染め続け、一番最後にわかったことは──自分は革命家どころか……マフィアとコカイン畑を守るためだけの、只の番犬だということだけでした。お笑いじゃありませんか、社会福祉公社はね、カルテルと手を組んだのですよ。“理想だけでは革命など達成でき得ない”とそう言いながら、彼らはその魂を売り渡したのです。私は公社を抜けました。その時私を匿ってくださったのが、父の親友であった──菜々のお父上その人です。菜々。私は一度捨てた鋼の自分に立ち返ること、そうすること以外に菜々をお救いする手立てはありませんでした。“猟犬”そして“番犬”、犬と呼ばれたこの私が命をかけて行える、ただ一つの恩返しでございます」
菜々「……いっ、犬なんて言うなよ!! 家族だろ由乃!! 私たちは家族じゃないか!? そんな言い方なんてするなよっ!! “番犬”なんて知らないよ! きっとどこかで死んだんだ!! 私たちの知らない遠いどこかで自分の罪を償って……!! だから、由乃とはなんの関係もないんだよ。 ね? 私たちの家へ……帰ろう?」
由乃「…………菜々。黄薔薇さま(ロサ・フェティダ)の妹は簡単に泣くものではありませんよ」
祥子「まあこれで、一件落着……ってところかしら」
ちさと「ざけんじゃねえよ。こいつらはお涙頂戴でハッピーエンドだ、そりゃいいわな。でもよ。あたしの肩に開いてるトンネルはよ、どこの誰が埋め合わせてくれるんだ?」
祥子「……我慢したら?」
ちさと「姉御よぉ、そいつあくせぇだろ。あたしらの世界じゃ落としどころってのが大事だろ。姉御だって百も承知だろうが?」
祥子「……まぁそれもそうかもね」
三奈子「んなもん簡単じゃねぇか。納得いくまでどつき合いでもすりゃあいい。武器(エモノ)なし。そんなら死ぬこたぁねえだろ」
ちさと「上等」
由乃「菜々?」
菜々「……あんな女に負けるんじゃないぞ。由乃さまは強いんだから!」
祥子「じゃあ決まりね。好きなだけどうぞ♪」
ちさと「おら、ちゃっちゃとかかってこいよ」
由乃「……くつひもがほとどけてますわよ」
ちさと「え?」

ヒュッ

ドバキッ

三奈子「入った入った」
祥子「若いっていいわね──」

ゴッ

グシャ

ドスッ

ゴ バガンッ

祥子「どっちに賭ける?」
三奈子「私はちさとに「2」を賭ける」
蔦子「じゃあ私は由乃さんに25000円。真美さんはどっちに?」
真美「いやいやいやいやちょっちょっ……! とめようよ!! ねえ!? とめよう!? ありゃ野蛮すぎるしあんたたちはイカれてるよ!! いくらなんだって女の子同士でこんな──」
祥子「んじゃ。とめれくれば?」
真美「え?」
祥子「だってほら、嫌なんでしょう? じゃあ、とめてきなさいよ、私たちはかまわないわよ?」

グッ

真美「え、ええと。二人共ほら? もういいじゃないかなあ? あとはほら朝日を眺めてお互いの闘志を讃え合うとかいろいろ──」
ちさと・真美「「すっとんでろ」」
真美「……わかりました、そうします」
美奈子「ほら見ろ」

ちさと「いっ、いっ。いいかげんに、くたばれ、くそめがね」
由乃「お、おっ、お前こそ……早く倒れろ……」
ちさと「お」

ぼこんっっ

由乃「は」

ドシャ

祥子「はい。ドロー」
菜々「……由乃さま!?」
由乃「あ……? な……菜々? ……申しわけ……ございません」
菜々「喋らないで。最後まで立っていたのは由乃さまだ。だから大丈夫だよ。立てる? ほらつかまって?」
由乃「すみ……ません……」
菜々「やめてよ由乃さま」
三奈子「手伝おうか? お嬢ちゃん」
菜々「由乃さまは私のお姉さまだ。だから人の手なんて借りないよ。必ず私が連れて帰る」
祥子「さすがは未来の黄薔薇さま♪ 妹(スール)祐巳」
祐巳「はっ」
祥子「手当をしてから自宅へ送ってやれ。運動部残党の襲撃がある場合は任意に排撃しろ」
祐巳「了解。ではこちらへ」
由乃「……菜々。一つお願いが……」
菜々「何?」
由乃「メガネを拾ってきてくださいませんか……」
菜々「どうして? あれは伊達メガネだろ?」
由乃「いえあれは……私が“菜々の姉”でいるために、必要なものですから……」

真美「おきろ──朝だよちさと──」

ザッパー

ぴくぴく

蔦子「こりゃあしばらくあとを引くなぁ。まったく」

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