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『こんなマリみてはいやだ 燃えよペン編
“第4話 偶像憧憬敗北編”』

「最初に言っておこう!
 この物語は現実の『マリア様がみてる』とはまったく関係ないフィクションであると。
 最近、三奈子を炎尾燃と同一化する人がいてたいへん困っている」

「男子高校生!」

部員B「三奈子さん、最近この彼なんかええんとちゃいますか!」

「リリアン生徒が男子高校生と出会う!」

「どうやって出会うか
 合コンで───────→15%
 通学の電車の中で───→60%
 吉祥寺駅周辺で────→25%
 渋谷でナンパ─────→0%」

ギラッ

「新聞部員は他校男子生徒を純粋な動機(たぶんそうだと思う)で好きになる!!」

ピシャ

バサッ

「新聞部員築山三奈子。
 『リリアンかわら版』編集長をこなす、どこにでもいる、ごくありふれた女子高生のひとりである」

三奈子「この彼と会いたい!
 新しい出会いの開拓だ!」
 そう、今まで私は、かつてこのタイプの男性と会ったことがなかった!!」

「一枚の写真をもとにイメージがふくらみ、キャラクターができあがる。
 新聞部員は燃える!
 ここぞとばかりに燃える!
 そして……」

三奈子「黄薔薇さま(ロサ・フェティダ)!!」
江利子「はいっ?」

バッ

三奈子「しっ、し……資料として買ってくださいっ!!」

「いまさらアイドルの写真集なんて恥ずかしくて自分では買えない三奈子は、恥と金銭的負担を山百合会に押しつけるのだ!!」

江利子「領収書ください。
 はい、どうぞ」
三奈子「あ、どうも」

「「あ、どうも」などと言ってはいるが、心の中はバラ色である。
 そして、新聞部の部室には、必然的にアイドル本が並び、CDが並び、DVDがビデオが並びまくるのだっ!」

三奈子「うむ!」

「新聞部の純粋な動機が燃える!
 部室やプライベートルームにポスターが貼られる。
 この辺から徐々に純粋ではなくなっていく動機!
 そして、ついに──」

三奈子「会わせてくださいっ!」

「エスカレートする欲望!」

江利子「……」
三奈子「……。
 これ以上は、松元潤本人に会わないと……会わないと書けませんっ」
江利子「あ……会って、会ってどーするんですか」
三奈子「う……」

「その時、三奈子は、自分の動機がまったく持って純粋でないことに気がつく!!
 何者かに手繰られている様な、情けない自分に。
 だが、もう止まれない!!」

ガチャッ!

ごくっ ごくっ ごくっ ごくっ

フーッ

「自分がなんの為にここまで来たのか。
 なんの為にここまで松元潤に入れ揚げてきたのか!?
 (最初は新聞の為だったんだけど)
 会えんでどうする。
 いや、会えて当然!!」

三奈子「会わないともう……書きません!!」

ゴワシャァン

「一見、新聞部という報道を愛し、妥協を許さず、とことん物事を追求してやまない信念のかたまりを持った女の姿がそこにはある。
 しかし、はっきり言って同じ歳の友達には、彼氏くらいいて一夏の経験をしている女の姿ではない!!
 あきれてモノが言えないのは江利子である!!
 なぜ新聞部がアイドルに会わなければならないのか!?
 なぜ会えないともう書けないのか!?」

三奈子「!!」
江利子(……こ……この目は本気だ。
 本当に松元潤と会わせないと、こいつは……書かない!!)
三奈子「……」
江利子(……しかし、これだけの迫力……熱気を失わせたくない。
 なんにせよ、新聞部の勢いを殺すことなど、黄薔薇ファミリー最大のタブー!!
 「そんなこと絶対に出来ませんよ」
 「会えるわけないじゃないですか」
 そんなセリフは素人でも合コンのことばかり考えてる女子高生だって言える……!!
 だが……私はくさっても山百合会の黄薔薇さま(ロサ・フェティダ)!!)

ふー……

ギュッ

江利子「……わかりました」
三奈子「!!」
江利子「必ず会わせましょう!」
三奈子「で……出来るんですか」
江利子「だが──今回は間に合わないかもしれません……。
 今回はとりあえず原稿を上げてください!」
三奈子「おっ、おやすいご用!!」

ウオオオオッ

ズガガガガガ

バッ バッ

ばあぁぁぁんん

フーッ

三奈子「200部上がりました、黄薔薇さま!!」
江利子「ありがとうございます!」

どきどきどき

江利子「確かに!」
三奈子「で……で、どうなりましたか、アレはっ。
 黄薔薇さまっ」
江利子「ああ……あの話ですか……。
 ダメダメ、やっぱりムリ!」
三奈子「!?…………!!」

ぐらり

江利子「それじゃ、おつかれさまーっ!」
三奈子「…………!!」

部員A「どうしたんですか三奈子さん!?」
部員B「三奈子さん!」

「このショックは当然つぎの仕事に影響する。
 取材を数本かかえている新聞部の次の仕事とは……当然他の薔薇さまの取材である」

祐巳「どうしたんですか、三奈子さま!!
 しっかりしてくださいよ〜〜」
江利子(にやり)

「この話は、山百合会の黄薔薇さまの勝ちで幕を閉じる……!
 ……だが──」

祐巳「何ですか、三奈子さま、この男性は」
三奈子「今一押しの花寺学院生です!」

「まだ、新聞部員の目はさめない。
 黄薔薇さまがだめなら、桂さんに花寺学院と合コンをセッティングしてもらうのだ!!
 今夜も新聞部は、夢を見つづけて新聞を作っているのである!」
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