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『こんなマリみてはいやだ 燃えよペン編
“第5話 学園祭特攻参加編”』

祐巳「それじゃ、できた新聞だけでも持っていきますからねっ!!
 いいですか、明日の朝7時までに上がらないと、この新聞は落ちるんですからね!
 あと何ページですか、真っ白なのは?
 ──8ページ……8ページですか!
 明日の朝7時までには21時間あります。
 楽勝ですねっ!」
三奈子「……」
祐巳「何か緊張感が足りない!!
 (何かをかくしているのでは……!?)
 と……とにかく、明日17日の朝7時がリミットですよ。
 とりあえずできてる分だけでも持っていきますからね!
 また電話します。
 がんばってくださいよ、ここが正念場ですからね!
 ごくろうさまでしたーっ」

バタン

三奈子「行ったか……」

コクッ

真美「三奈子さま!」
三奈子「もう10分待て……紅薔薇のつぼみの妹が、何か感づいてひきかえしてくるかもしれん!」

「10分後」

真美「三奈子さま!」
三奈子「ようし、つれてきた友達をベッドから出していいぞ!」
真美「もう出てきていいってよ、慶子」
慶子「うん」
三奈子「全員用意しろ!
 行くぞ」
部員A「いいんですか三奈子さん!」

三奈子「10月17日朝7時がリミット!!
 しかしその前日、16日は1年に一度、リリアン女学園の学園祭だった!!
 出ずばなるまい!
 いや、出たい!!
 真っ白なページが8枚。
 残る時間は6時間!
 3時に帰ってきても、1時間1ページちょっとでやれば9時にはできる!!
 楽勝だ!!」

「学園祭!!
 それは、リリアン生にとって1年に1度の最大のイベントである。
 なにしろ、部活動や委員会がイベントを企画し、当然薔薇さまたちも参加!!
 DVDプレイヤーのあたる抽選会まである!」

三奈子「この祭に出ずして……来年の私は、ない!」
森林「いつも、部員をつれずに一人で学園祭に出る三奈子が、今年は部員どころか、その友達や後輩さえもひきつれている!!
 これは……三奈子の復讐だ!!
 昨年先輩に言われた仕事に追われ学園祭に出られなかったことに対する、三奈子の精一杯の復讐なのだ!!
 しかも、今年は時間いっぱいにせまった締め切りさえもはねのけている……。
 完全だ、完全なる復讐だっ……」

ガヤガヤ ガヤガヤ

三奈子「! 紅薔薇さま(ロサ・キネンシス)だ!!
 おい、みんな見ろっ!!
 紅薔薇さまだ!!」
友達A「ええっ」
友達B「ほんまやー」
友達C「きゃー本当ー!!」
三奈子「わはははは。
 今から紅薔薇さまに声をかける!
 来たい奴は来ーいっ」

ゾロゾロゾロ

三奈子「紅薔薇さま」
蓉子「! よう、三奈子さんじゃないか!」
三奈子「いや、どうもどうも」
部員(おやっ?
 急にヒクツな態度になったぞ)
三奈子「あのー……。
 あ、あ、ア、アシスタントといっしょに写真をとっていただけませんかー」

ゴクリ

蓉子「……いいよ」

パシャラ

三奈子「ありがとうございました!」
慶子「ううっ!」
三奈子「どうした?
 ……!?」
真美「この子、紅薔薇さまと話せたんで感動して泣いてるんだって」
三奈子「なっ」
慶子(コクン)
三奈子「!! こっ、こいつ……。
 最初は築山三奈子のファンだといって部室に来たクセして!!
 いっ、一度も私は涙なんか見たことがねえぞっ!!」

「その頃、灯の消えた新聞部部室では──
 誰もとる者のない中で、電話のベルだけが悲しげに木霊していた──」

「学園祭会場」

三奈子「あっ白薔薇さま(ロサ・ギガンティア)!」
聖「体育祭ようのネタ考えてる? 三奈子ちゃん。
 だめだよ、細かい仕事ばっかりふやして……ヒマじゃないでしょ!」
三奈子「いやー、学園祭が終わったら他のとこなんか、ズバッ!! とブッ切りますよ!」
聖「今、何やってんだっけ」
三奈子「修学旅行とか剣道部交流戦とか……」
聖「んじゃ、体育祭ネタできたら電話してよ」
三奈子「んじゃ
 ……お」
江利子「おっ?」
三奈子「!」
江利子「やあ、三奈子さんじゃないですか?
 ども、ども」
三奈子「うわあーーああーー。
 な……なんで黄薔薇さま(ロサ・フェティダ)が出店の店員なんかに……」
江利子「いやー、私達の出し物は終わったからねえ」
三奈子「いっ、今の話……聞いてた?」
江利子「は? 誰の話ですか?」
三奈子「!」
江利子「?」

「山百合会には個性的な人物が選ばれることが多い。
 うかつなセリフを吐いた為に、この世界にいられなくなった者もいるのだ!!
 江利子さまは特に注意である!!」

「その頃、新聞部部室では。」

プルルルルッ

プルルルルッ

「締め切りまであと16時間」

「再び学園祭会場。
 (打ち上げ)」

森林「うわーっ、はっはっはっ」
部員B「うひゃーひゃひゃあ」
三奈子「…………」

「築山三奈子は今、自らの大いなるミスに気づいていた。
 普通のペースならば、たしかに1時間1ページゲラアップは可能である!
 であるが!
 今、三奈子の目の前で部員達が飲んだくれて真っ赤になっているのだ!!
 一方では、抽選のDVDプレイヤーにはずれた部員がやけになって落ちこんでいた」

三奈子「………………」
森林「み、三奈子」
部員B「時間とっくにオーバーしてはりますよ〜〜」
部員C「も、もうそろそろ帰らんとやばいんじゃないっすか」
部員A「あはは」
三奈子「……。
 (あ、あわててはいかん……築山三奈子!!
 ここで取り乱したら女がすたるぞ!)
 よおぉぉおしっ、帰るか!!」

三奈子「だが心配するな、まだ最終下校時間の9時まで5時間ある。
 9時までに新聞ができていれば、その間何をしていようと私達の自由なのだ!!
 おそれるな!!
 必ず神はいる!!」

「朝が来た。
 午前7時が来た……。
 山百合会の祐巳も新聞を取りに来た。
 築山三奈子は、部員が机の前でぶっつぶれてる中、一人で泣きながら原稿を上げていたという」

三奈子「すんません、あと30分!
 あと30分待ってください!!」

「新聞が上がったのは、お昼休みであった。
 祐巳は黙って新聞を持っていった。
 やるだけのことはやった。
 今こそ三奈子は、やすらかな眠りにつくのだ」
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