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『こんなマリみては……いやじゃないかも “続・革命の日編 (下)”』

祐巳「この人混みの中、いくら行き先を知っていたとはいえ……。
 ホントに見つかるとはね……運命かしら、やっぱり……」
瞳子「だから、どういう事ですか!!
 祐巳さまが様子を見に来たって言うならわかりますが、なんでっ……何で祥子さま達まで引き連れてきてるんですかっ!!
祐巳「まあ、簡潔に言えば、この人たちがうちに押しかけてきたわけよ。瞳子ちゃんに会いたくて。
 ついでに、最近あなたのお気に入りの私の弟のツラを是非拝みたいって」
瞳子「それでここまで連れてきたんですか?
 祐巳さま、一体誰の味方ですか?」
祐巳「うーん、それはまあ……なんというか、複雑な乙女心が色々ねー……」
瞳子「なんですか、それは!!」
祐巳「ま、いいじゃないの、どうせいずれはぶつかる相手なんだし」
瞳子「よくないわよ!!」

スッ

祥子「君が祐麒君ね」
令「顔立ちはやっぱり祐巳ちゃんと似てるわね。
 性格は断然素直そうだけど」
志摩子「身長なんか祐巳と同じくらいじゃないの?」
由乃「それで、瞳子ちゃんは一体コレのどこがそんなにお気に召したんだと思う?」
令「やっぱり、この親しみやすそうな身長とかじゃないの?」

ポンッ ポンッ

祥子「今でも小さい事を気にしていたからね……。
 でも、それなら志摩子もそんなに変わらないでしょ?」
志摩子「私は瞳子ちゃんより4.7センチ高いわよ」
祥子「じゃあこの男を感じさせない可愛らしさとか。
 お姉さんより優しげな可愛さがあるわね」

くいっ

令「なによっ、愛らしさでは私も負けないわよっ!」
祥子「令は図体ですでに愛らしさなんて言葉はアウトでしょ」
由乃「ははは、言えてる」
令「あっ、ひっどーい」
祐麒(何か余裕だ、この人たち……。
 オレのじゃ相手にもならないと思ってるのか……。
 ──ちくしょう……)

祥子(!?
 ──ふーん……なるほど?……やはりこれは、やっかいな感じね。
 ──瞳子ちゃんに……気づかせときたくないわ……)
祥子「ああ、そういえば、私たちの紹介をしていなかったわね」
令「私は支倉令でーす」
祥子「私は小笠原祥子」
由乃「島津由乃よ」
志摩子「藤堂志摩子」
祥子「私たちはね、瞳子ちゃんの友人で、瞳子ちゃんの事が大好きなのよ。
 だからね、最近放っておかれた上、それが君にご執心だったからって聞かされて。
 瞳子ちゃん好きを自認する私たちとしては、すごーく面白くないわけよ」
祐麒(──あれ?
 ──ひょっとして……嫉妬されてる?)
祥子「とんだ鳶に油揚げをさらわれ中って感じかな。
 でも私たちは、その油揚げをさらわれたくないし、虫もつかせたくない」
祐麒(やっぱり──)
祥子「できれば、そんな悪い虫は、根こそぎ駆除したいと思っているのよね」
祐麒(オレの事を威嚇してる……んだよな?……これって──。
 なんだ……オレの事相手にならないって判断されてるわけじゃないんだ?
 いやむしろ、威嚇しなきゃいけない程要注意人物って思われてる?
 だったらオレだって、負けるわけにはいかないっ!!)
祐麒「でもっ!!
 その油揚げが、望んでさらわれたがっていたら、どうなんだ!?
 鳶にこそ、食べてもらいたいと思っているかもしれないじゃないか!!」

スッ

祥子「──君は……見かけだけじゃなく、中身もかわいいのね。
 ふっふっふっふっふっ、そうはむかうんだ……」

ぎりぎりぎり ぎりぎりぎり

むにい〜〜〜っっ

祐麒「ひぎげーっ(いってーっ)。
 はぎふぐんがごっー(なにするんだよーっ)」

ぎゅうううううっっ……

瞳子「あっ!!
 こらーっ、何、祐麒こづき回してるですかーっ!!
 やめてくださいっ!
 それは、ここのところずっと祥子さまたちのこと避けてきたのは悪かったですよ!
 でも、それと祐麒とは何の関係もないでしょ?」
祥子「関係ない? そうかな?
 私たちが、放っておかれた間、毎日祐麒君と会っていたんでしょ?
 だったら充分関係あるじゃない」
瞳子「そ、それは……」
祥子「だいたい、毎日会っていた相手が男ってのが気に入らない。
 瞳子ちゃんのそばには、他の男なんか近づけさせたくないからね、私たちは」
瞳子「あのですねえ……それは祐麒は男でしょうけど、祐巳さまの弟なんですよ?
 勝手に自分達のライバルに仕立てあげないでください」
祐麒「!?」
祐巳(……あーらら、マズイかも……)
祥子「おや? ふーん?」

チラッ

目線で会話中

令(どう思う?)
祥子(ごまかしてる感じはしないけどね)
令(じゃあ、本当に気に入ってるだけってことか?)
由乃(けど、祐麒君の方は、その気があるでしょ?)
志摩子(じゃカマかけてみたらどう?)
祥子(そうね。
 うまく誘導できれば、祐麒君にダメージを与えられるかも。
 やってみるわ)
祥子「──つまり瞳子ちゃん。
 祐巳の弟だと相手にはなりえないんだから威嚇するなって、言ってるのかな?」
瞳子「そうよ!
 そんなんじゃないんだから、ちょっかい出さないでよ!」
祥子「って言われてもねえ……。
 そうやって瞳子ちゃんが過剰に庇えば庇うほど、祐麒君が大事なんだって思えちゃうんだけどねー……。
 "祐巳の弟"だからにかこつけて、私たちが手出しをしないように予防線張ってるとか。
 やっぱり私たちを欺こうとしてるんじゃないのかな?」
瞳子「ちっ……違うって! ホントにっ!!」
瞳子(そりゃ"彼氏"にすれば、祐麒が手に入るならそれでいいかなー……って、チラッと思ったけど……でもっ!!)
瞳子「男としてとか、そういう風には全然意識してないし」

                   _ _     .'  , .. ∧_∧
          ∧  _ - ― = ̄  ̄`:, .∴ '     ( 祐麒)
         , -'' ̄    __――=', ・,‘ r⌒>  _/ /
        /   -―  ̄ ̄   ̄"'" .   ’ | y'⌒  ⌒i
       /   ノ                 |  /  ノ |
      /  , イ )                 , ー'  /´ヾ_ノ
      /   _, \               / ,  ノ
      |  / \  `、            / / /
      j  /  ヽ  |           / / ,'
    / ノ   {  |          /  /|  |
   / /     | (_         !、_/ /   〉
  `、_〉      ー‐‐`            |_/

瞳子「それで言うなら、似た環境にあった事に対して仲間意識だし」

|  |
| ‖祐麒      ノノノノ -__ 
| ‖         (゚∈゚*)・゚・。   ─_____ ___
|∧ 从ノ    (ミ_(⌒\ヽ _ ___
( (≡ ̄ ̄ ̄ ̄三\ヽ ノ )
|(つWつ  ̄ ̄\  彡) / / =_
| \つ-つ     \,__,ノ
|  | )        / / ≡=
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|  |        ミ/= (´⌒(´⌒;;
| ''''""'''"'''"""''"""'''''"'"''''""''"''''"""''"''"''"'''"'''''''"""''"''"''"'''"''"()
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瞳子「でも一番近い感情なら、同じ歳だけど弟みたいにかわいいと思っているのよ!!」

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  |         ̄ ̄ ̄ノ
  \    / ̄ ̄ ̄ 
   | | |
   (__)_)

祐巳「あ、撃沈した」
祐巳(よかれと思って弟みたいに好かれてる事、黙ってたんだけど。
 やっぱり教えといた方がよかったかしら?)
祐巳「ちょっと、こんな事くらいで撃沈しないでよ」
祐麒「騙したな……」
祐巳「騙してないわよ、黙ってただけ」

がくりっ……

祐巳「いいじゃないの、男として意識されてなくても。
 好意を持たれることには変わりないんだから。
 そうなるべく、かんばればいいだけでしょ?」
祐麒「そうだけど……」
祐巳(祐麒をフォローしてあげてもいいけど、これからのことを考えたら傍観者に徹した方がいいわね)
祐巳「──というか……ここを自力で立ち直れないようじゃ、瞳子ちゃんを譲る価値ないわよね」

がばあっ

瞳子「それにね、それにね、祐麒ってすごいのよ。
 生徒会入ってるし、もう将来のこと考えちゃってさ!
 しかも、他人の私のことまで思いやってくれる、優しいいい人なの……」

じとーっ

はっ

瞳子「って何言ってるんだろうねー! 私!!
 いやっホント、いい人だからね。
 ついホメたくなっちゃうの」
瞳子(やっばー……、この人たちに聞かせたら逆効果じゃないの……)
祥子「後ろの彼は、瞳子ちゃんによる見事な鉄槌をくらって撃沈してもらったわけだけど」
令「でも私たちは、さりげなくお惚気攻撃を受けた気がしない?」
志摩子「ええ……」
由乃「すごく、おもしろくないわね……」
祥子「トドメ、さしましょうか」

ニヤリッ

フフフッ

祐麒(男として、意識されてないのか……オレ……。
 そうだよな、警戒されてないってことは、裏を返せばそいうことだよな……。
 どうして気付かなかったんだろう……。
 ──って祐巳の奴が「脈アリ」みたいな言い方してけしかけたからじゃねーかよっ!
 ──まあ……どっちにしろ、けしかけてもらわなきゃ動けなかったんだけどさ……。
 ……オレこんなで……自信ないし……)
祥子「なるほど、よくわかったわ。
 つまり、瞳子ちゃんにとっては弟みたいな存在でしかかないのね」
由乃「そうよねー、生徒会って言ってもどうせ下っ端だもんね」
令「瞳子ちゃんと背が同じようじゃ相手になるわけないよね」
志摩子「そんな意識もしない相手につっかかる私たちが悪かったわ」

更に傷口に塩をすり込む言の刃

瞳子「そ、そうなのよ!
 祐麒は、そんな相手じゃないんだから、手を出していじめないでよっ」

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グラリ……

ききゅっ グッ

祐麒(──わざとだ……。
 これって絶対! わざとだっ!!
 ああ確かに祐巳の言ってた通り、強者だよこの人たち!!
 的確に弱点見抜いて、一番ダメージ受けるやり方で攻撃して来るんだからな!
 こんな人たちに太刀打ちできんのか……オレ……。
 ──いやそれよりも、瞳子さんに意識されてないって事の方が問題じゃないか。
 オレを庇うために言った言葉だとしても、あれは本心だろう。
 実際瞳子さんと背変わらないし、祐巳に似た女顔だし……。
 なにより以前の行動が、それを物語っている……。
 そうだよ……こんな風に庇って守られてるようじゃ、相手にされなくて当たり前だよな……。
 このままじゃダメだ。
 オレの事を意識してもらわなきゃ……。
 ちゃんとこっちを向いてもらわなきゃ)

ぐっ

祐麒「瞳子さんっ」
瞳子「!?」
令「うわっ、何かヤバイ感じがするっ」
由乃「ああ! この展開はマズイ……」
祥子「とっ止めないと!!」

ばっ

祐巳「「相手にもならない」相手なんでしょう?
 だったら別に何言わせてもいいんじゃないですか?」
祥子「ホントにそうなら、こんなに慌てるわけじゃないじゃないの。
 わかってるでしょう?
 でもやっぱり祐巳は、祐麒君の味方につくのね」
祐巳「いいえ、あくまで私は中立ですよ。中立。
 だってあなた方は瞳子ちゃんに気持ちを伝えてあるのに、祐麒には言わせないなんて、フェアじゃないでしょう?」

瞳子「何?
 どうしたの、祐麒?」
祐麒「瞳子さん……オレ……オレは確かに祥子さんと違って大人じゃないから、瞳子さんに意識されてないかもしれない!
 男だって……異性だってことも!!
 背だって瞳子さんより少ししか高くないし、友達にはオモチャ扱いされるし、男なんかに襲われたりもしてる……し……。
 こんな風に……まだ全然未熟でしかないけど……でもっ……。
 これからがんばるから!
 瞳子さんにつりあう男になれるよう努力するから、オレの事を見て欲しいんだ。
 オレは、瞳子さんを女の人として好きだから」
祐巳(言ったっ!)
祥子・令・由乃・志摩子(言われたあっ!!)
瞳子「え、えーと……」
瞳子(で、女の人としてってことは、恋愛感情でってことなんだね?
 この祐麒が、私の事を……好き──)

ドクンッ……

ドキン ドキン

瞳子「あれっ?
 なんか……あれ? あれ?
 何コレ、心臓がすっごいバクバクいって……」

かぁーーーっ

祐巳・祥子・令・由乃・志摩子「まさか……瞳子ちゃーんっっ!?」

瞳子(アレーッ!?)

令「うわーっっ、納得できないわ、私はーっっ」
祥子「本気なの……」
由乃「こんなのアリ?」
志摩子「嘘でしょう……」

瞳子(リリアン女学園に入って半年近く)

祐巳「ちゃんと情緒が開花したみたいじゃない」
祐麒「あの……瞳子さん?」

瞳子(あれから毎日が小さな革命の日々だったと思う。
 ──しかしまた、この日新たに大きな何かの革命が、おきてしまったような気がする……)
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