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『こんなマリみては……いやじゃないかも
“続・革命の日編 365歩のマーチ”』

祐麒(オレは福沢祐麒。ただの高校三年生。男子校で寮生活をしてます。
 こんなバラ色とは言い難い状況にあるオレですが……。
 実は、つきあっている人がいます)
祐麒「あっ! もちろん男じゃありませんからね!!」
祐麒(彼女はとてもかわいく、とてもキレイで、とてもモテる人です。
 色々事情のある、オレより一歳下で、つきあって一年になるのですが……。
 とても健全な、おつきあいをしています──……。
 ──何故ならば)

祐麒・瞳子「またですか……」

祐麒(彼女をとりまくコジュウト連中が、常につきまとうからです。
 その中には、彼女の元お姉さまであり、オレの姉でもある祐巳も含まれてます。
 どんなに見つからずに会おうとも、どうやってか彼女らはかぎつけ、ジャマしにやってくるのです。
 ただでさえ、そうしょっ中は会えないというのに……。
 ……ああ、自分が情けない。
 未だに彼女らにうまく対抗できず。姉をもかわせず。いつまでこんなで……)
瞳子「どうしたの? 何か暗くない?
 お姉さまたち撒いて、疲れた?」
祐麒「いや、そうじゃなくて。
 今日も逃げるだけだったから、ちょっと落ちこんじゃっただけ……」
瞳子「逃げたからって、何で落ち込むの?」
祐麒「だって、それじゃ守れたことにはならないだろ?
 あの人たちに対抗できないようじゃ、つきあってる男としてダメだよ……全然」
瞳子「あのねえ、祐麒が私とつきあう理由は何?
 ただ、私を守りたいだけ?
 それとも、お姉さまたちに対抗したいから?」
祐麒「そんなの瞳子さんが好きだからに決まってるだろっ」
瞳子「でしょ?
 だったらいいじゃない、それだけで。
 気持ちは嬉しいけど、私別に守って欲しいとか思ってるわけじゃないし。
 そんな気負わなくてもね」
祐麒「……でもオレ、全然進歩してないから……。
 未だに背だって低いし。
 学校でも色々……あるし……」
瞳子「あなたやたらと焦ってない?」
祐麒「だって、瞳子さんがキレイになってるからっ!」
瞳子「は?」
祐麒「瞳子さんはすごくかわいいっ!! って感じだったけど。
 最近はなんか、艶っぽいっていうか……"かわいい"っていうより"キレイ"って感じになった。
 そんな風に瞳子さんが変わっていくから、オレは置いておかれる気がして……」
瞳子「変わったのかどうか、私にはわからないけどね。
 もし変わったんだとしたら、どうして自分が変えたんだって思わないのよ!
 私だって伊達や酔狂でつきあってるわけじゃないんだからねっ」
祐麒「え……そういえば、一年もつきあってて聞いたことなかったけど……。
 瞳子さんてオレのこと好きなの?」
瞳子「今さら何言ってんのよ。
 でなきゃこんな風につきあってるわけないでしょっ」
祐麒「そ、そうだよな……」
祐麒(瞳子さんオレのこと好きだったんだ……。
 そうか──好きだったんだ──……。
 好きなのか──……)
祐麒「えっ、いっ……いつから、どこがっ……」
瞳子「いつからって……まあ、最初は……こうグリグリしたいなって感じで、いつの間にかかな……。
 で、先を見据えた真っ直ぐな姿勢とか、その為に一生懸命なとこがすごいなって思ったし。
 優しいし。強引なところもないし。
 素直なとこがかわいいし!
 しかも、他の男と違って圧迫感を感じないし!!」
祐麒(──それって、ただ人畜無害で、男として意識されてないんじゃ……)
瞳子「でもなにより、こんなに私のことを受け入れて、思ってくれることが一番かな」
祐麒「えっ」
瞳子「やっぱ私ってさ。他の人とちょっと違うから、面倒ばかりで大変でしょ?
 なのに祐麒は、なんの躊躇もなく受け入れてくれて……。
 それだけでも感謝してるのに、愛想尽かさずずっとつきあってくれたじゃないの」
祐麒「瞳子さんのことを面倒だなんて、誰も思わないよ」
瞳子「そうかな。だとしても、それだけじゃないくてさ。
 あの頃の私のまわりは、全てを今すぐに変えようとめまぐるしくて。
 私の為だった事だけど、その急な変化は正直苦しかった。
 そんな時に祐麒は、私のペースにあわせてゆっくり進んでくれたでしょ?
 焦らず、無理強いせず……」
祐麒「そんなの……ただ甲斐性がなかっただけだ……」
瞳子「そうかも知れないけど……でも、私にはそれがすごく嬉しかったから」
祐麒「!!
 ──やっぱりオレ、置いてかれてる……。
 一人で遠くに行っちゃったって感じ……」
瞳子「何よソレッ!!
 わかったわよ。
 そんなに言うなら、一緒に前進すればいいんでしょ」
祐麒「えっ」
瞳子「キスしようじゃない」
祐麒「ええっ、ま……マジに?」
瞳子「そうよ。別に嫌だったらい……」
祐麒「スルッ!
 するするするしますっ!!」

祐麒「本当に、しても平気?」
瞳子「うん、平気よ!」
瞳子(と、思う)
祐麒「じゃあ……」
瞳子「…………待った!」

バチンッ

祐麒「イテッ……。
 やっぱりダメなんだ……」
瞳子「違うわ」

がしっ ズイッ

瞳子「私の方がする」

ちゅうっ……

祐麒(男なのに、受け身の立場っていったい……。
 …………ま、いいか……。
 この人の方から、意識してくれたんだし。
 なにより、先に惚れた方が負けっていうしね……)

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