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『こんなマリみては……ちょーくせになりそう
“新世紀エヴァンゲリオン 第弐拾四話「最後のシ者」編”』

祐麒「母さん、祐巳、祥子さん……俺はどうしたらいいだろう?」

『マリアさまのこころ』の歌が聞こえてくる。

瞳子「歌はいいわね」
祐麒「え?」
瞳子「歌は心潤してくれる。リリンが生んだ文化の極みだわ。
 そう感じない? 福沢祐麒さん」
祐麒「俺の名を?」
瞳子「知らない方はいないわ。失礼ですけど、貴方は自分の立場を少し知った方がいいと思いますわよ」
祐麒「そう、かな? ……あの、君は?」
瞳子「私は瞳子。松平瞳子。貴方のお姉さんと同じリリアン女学園高等部一年椿組、黄薔薇のつぼみの妹よ」
祐麒「黄薔薇のつぼみの妹? 君が? あの……松平、さん?」
瞳子「瞳子でいいわよ。福沢さん」
祐麒「俺も、あの、ゆ、祐麒でいいよ」

瞳子「あら、私を待っていてくれたのかしら?」
祐麒「いや、別にあの、そんなつもりじゃ。」
瞳子「今日は?」
祐麒「あの、中間テストも終わったし、駅ビルの書店へ行って帰るだけだけど。
 でも、ホントはあまり帰りたくないんだ……この頃」
瞳子「帰る家、ホームがあるという事実は幸せにつながるわ。いいことよ」
祐麒「そう、かな?」
瞳子「私は貴方ともっと話がしたいな。一緒に行ってもいい?」
祐麒「え?」
瞳子「書店よ。これからなんでしょ?」
祐麒「う、うん」
瞳子「ダメかしら?」
祐麒「いや、別に……そういうわけじゃ、ないけど」

瞳子「一時的接触を極端に避けるわね、貴方は。
 怖いのかしら? 人と触れ合うのが?
 他人を知らなければ、裏切られることも、互いに傷つけ合うこともない。
 でも、寂しさを忘れることもないわ。
 人間は寂しさを永久になくすことは出来ない。人は一人だからね。
 ただ、忘れることが出来るから、人は生きていけるのよ」
祐麒「時間だ」
瞳子「もう終わりなの?」
祐麒「ああ、もう帰らなきゃ」
瞳子「貴方と?」
祐麒「え? あ、いや……」
瞳子「常に人間は心に痛みを感じているわ。
 心が痛がりだから、生きるのも辛いと感じる。
 ガラスのように繊細ね。特に貴方の心は」
祐麒「俺が?」
瞳子「そう、好意に値するわよ」
祐麒「コウイ?」
瞳子「好きってことよ」

瞳子「やっぱり、私がソファーで寝るわ」
祐麒「いいよ、俺が無理を言って誘ったんだから。ここでいいよ」
瞳子「何を話したい?」
祐麒「え?」
瞳子「私に聞いて欲しいことがあるんでしょ?」
祐麒「色々あったんだ……高校に入って。
 中学の頃は部活も委員会も入っていなかったんだ。穏やかで何もない日々だった。
 ただそこにいるだけの……でもそれでも良かったんだ。
 俺には何もすることがなかったから。」
瞳子「人間が嫌いなの?」
祐麒「別に……どうでも良かったんだと思う。
 ただ、柏木先輩は嫌いだった」
祐麒(どうして瞳子さんにこんなこと、話すんだろ?)
瞳子「私は貴方に会うために、生まれて来たのかも知れないね」

祐巳「さあ、行くよ。おいで、松平瞳子。そして、私の妹」
由乃「瞳子ちゃんが、祐巳さんの妹に!」
祥子「そんな馬鹿な……可南子は!?」
乃梨子「こちらに向かっています! 確認済みです!」
祥子「いつ、ロザリオの授受を」
志摩子「していません! 瞳子さんはロザリオを受け取っていません!」
祥子「受け取っていない? どういうこと!?」

可南子「うそよ! うそよ! うそよ!! 祐巳さまが、祐巳さまが瞳子を選ぶなんて、そんなのうそよ!!」
祥子「事実よ、受け止めなさい」

祐巳「遅いな、可南子ちゃん」
可南子「裏切ったな! 私の気持ちを裏切ったな! 父さんと同じに、裏切ったんだ!」
祐巳「待っていたわ、可南子ちゃん」
可南子「祐巳さま!」
祐巳「薔薇さま。リリアンより生まれし、生徒にとって、憧れの存在。
 それを利用してまで山百合会を存続させるスール制度。私にはわからないよ」
可南子「祐巳さま! やめてよ! どうしてなのよ!?」
祐巳「瞳子ちゃんは私と同じ疑問を持っている。私もなし崩し的に山百合会に入ったからね」
可南子「紅薔薇さまのロザリオ!」
祐巳「そう、あなたたちはそう呼んでいるね。何人にも犯されざる、神聖な十字架。心の光。
 可南子ちゃんにも判っているんでしょう。紅薔薇さまのロザリオは、誰もが持っている心の鎖だと言うことを」
可南子「そんなのわからないよっ! 祐巳さま……どうして……」
祐巳「私が瞳子ちゃんを選ぶことが、私の運命だからよ。結果、次の紅薔薇さまがいなくなってもね」
可南子「……」
祐巳「私はこのまま死ぬことも出来る。生と死は等価値なのよ。
 自らの死、それが唯一絶対的自由なのよ」
可南子「何を……祐巳さま? 何を言っているのかわからないよ!? 祐巳さま」
祐巳「遺言だよ」
可南子「……」
祐巳「さあ、私を消して。そうしなければ、あなたたちが消えることになるわ。
 ロザリオを与えられ、次の紅薔薇さまを受け継ぐ生徒は一人しか選ばれないんだから。
 そして、あなたは選ばれざる存在ではない。
 あなたたちには未来が必要だわ」
可南子「……」
祐巳「ありがとう。あなたに会えて嬉しかったわ」
可南子「………………………………………………………………………………………………
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……………………………………………………………………………………………………!!」

可南子「祐巳さまが、好きだっていってくれた……私のこと。
 初めて、初めて人から、好きだって、言われたの。
 好きだったんです……生き残るなら祐巳さまの方だったんです」
祥子「違うわ。生き残るのは、生きる意志を持った者だけよ。
 祐巳は死を望んだ。生きる石を放棄して、見せかけの希望にすがったのよ。
 可南子は悪くないわ」
可南子「……冷たいですね、祥子さま」
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