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マリア様がみてる VALKYRIE PROFILE

祥子「なつかしいわね」
由乃「リリアン女学園へようこそ!」
祥子「まるで客をもてなすような言い方なのね?」
由乃「祥子さま!! ずっと待っていたの。蓉子さまから戻ってくるって聞いたから!」
祥子「相変わらず元気そうね由乃。……でも、ちょっと元気すぎるかしら?」
由乃「もうっ、祥子さままで蓉子さまみたいなことを言わないで!」
令「いや、ほんとに、由乃は山百合会幹部として自覚を持つべきだね」
祥子「令」
令「久し振りだね、祥子」
祥子「ええ、元気だった?」
令「ああ、みんなにはよくしてもらっているし、元気だよ。それより、ほら、由乃」
由乃「そうだった! 中でシスター上村がお待ちだったんだ!」
祥子「そう、じゃあ、また後で」
令「──また、後で……祥子」
由乃「──でも、どうしてシスター上村は、祥子さまをお呼びになったのかな?」
令「彼女の使命を忘れたのかい、由乃」
由乃「令ちゃんに言われなくても判ってるわよ! 優秀な妹の魂を狩り集めることでしょ」
令「その通り、そしてたくさんの妹の魂が必要となる事態といえば……」

祥子「シスター上村、招致に応じました。任務はいかがなものでしょうか」
蓉子「立ち上がりなさい祥子。多くの下々の者と同様に頭を垂れる必要など、あなたにはないのだから。久しいわね、祥子」
祥子「会いたかったわ蓉子さま」
上村「小笠原祥子よ。山百合会幹部の三薔薇さまのうち、最も神格の高いそなたを呼び覚ましたのは、もちろん訳がある。黙示録が我に告げたのだ。世界の終末……アーマゲドンが近いことを!」
祥子「アーマゲドン……!」
上村「花寺学院も不穏な動きを見せている。我らリリアン女学園と奴らとの争いは、避けられぬところだ。我々には戦力が必要だ。そなたは、プロミストアイランドへ赴き戦力に相応しい人間の魂を捜してきてもらいたい」
祥子「そのような大任を私に……光栄です」
上村「それでは、蓉子よ!」
蓉子「はい。私も一緒に行ってあげるわ。すぐに戻らなくてはならないけど……。目覚めたばかりのあなたを一人で行かせるのは、心許ないから。行きましょう。妹たちの住む土地、プロミストアイランドに!」

祥子「……ここが……妹たちの住む世界……」
蓉子「そう、プロミストアイランド。肉体という檻に閉ざされた魂のさまよう場所。……なつかしい?」
祥子「特別な感情なんて無いわ。見ず知らずの土地だもの」
蓉子「……そうよね。何か、聞こえてこない?」
祥子「なんのこと?」
蓉子「あなたには、あなただけの力があるわ。瞳を閉じて、精神と集中し、心を空間に広げていけばきっと判るわ」
祥子「…………」
「可南子……可南子助けて!!」
「つまらないと感じているのは、姉さんが満たされているからだよ」
「……悲しいな人間だな、小父さんよ」
「うわあああ化け物……!」
「……違う!」
「無礼者、万死に値するぞ」
祥子「……あ」
蓉子「聞こえたのね」
祥子「……これは!?」
蓉子「それがあなたの力よ。死を間近にした少女の悲しみや怒り、願い、あらゆる魂の律動を感じる力。あなたは、死者の人格や人生そのものを共有できるのよ」
祥子「こうやって死を迎えた者を見つけて。妹に相応しい魂を選べという訳ね?」
蓉子「そうよ、だから……」
祥子「だから?」
蓉子「行きましょう。もっと近付いて心をシンクロさせれば、彼女らの心が理解できるわ」

山辺「姫! いずれ学園の指導者となられる御身でありながらチョークに八つ当たりとは、いささか見苦しゅうございますぞ!」
瞳子「お黙りなさい山辺! わらわは、これほどの辱めを受けて黙って黙っていられるほど腰抜けではないわ! たかが、“傭兵”風情が! わらわを甘く見たらどうなるか……」
山辺「瞳子姫! この件に関しては、姫は何もお考えなさらぬように! 全て私めにお任せください」
瞳子「……」
山辺「いいですかな、余計なことはなさらぬように!」
瞳子「しつこい!」

−昨日−

瞳子パパ「この度は、そなたたちの奮闘により、インターハイで優勝することが出来た。心より礼を申すぞ。して、その中において最も功多き者、剣道部の若獅子二条乃梨子よ! そなたに褒美をとらす!」
乃梨子「! お言葉ですが理事長よ! 私よりも勲章を受けるに相応しい人がいるはずです!」
秘書:その通りです、理事長。彼女は確かに正式部員ではありませんが……彼女の働きは素晴らしいものでしたぞ」
瞳子パパ「ムッ……!? し、して、その者の名は……!?」
乃梨子「細川可南子さんです! さあ!」
瞳子パパ「オホン……で……では……細川可南子よ!!」
可南子「はっ……」
瞳子パパ「そなたには勲章を授けよう、前へ」
瞳子パパ(“傭兵”風情が……なぜ学生でもない者に勲章をやらねばならんのか……)
可南子(……人を見下した目だ……取り繕いやがって)
可南子「……有り難き幸せ。身分を問わぬ広い心遣い感謝いたします」
瞳子「うむ」
瞳子パパ(蛮族と変わらぬ者でも、わきまえているようだな!)
可南子「くっ、くくく……。あっははははは!!」
瞳子「!?」
可南子「ははは……あんたは悲しい人間だな、小父さんよ。だが私は、こんな茶番に付き合うほど暇じゃない! この空っぽの像は、あんたを象った物のようだな!」
瞳子パパ「ひっ……」
可南子「私は、こんな物には興味がねえんだ。さっさと報奨金を戴いていくぜ」
瞳子「無礼者!! お父様の心遣いを無視した暴言! 万死に値するぞ!! その者を捕らえよ!!」
乃梨子「……可南子さんらしいな」
瞳子「何をしている……!」

瞳子「……あの無礼な男に一泡吹かせる方法はないものか……例えば……そうじゃ♪」

美嘉「お帰りなさい、姉さん。ケガはない?」
可南子「いいから座ってろ」
美嘉「……」
可南子「なんだ、まだこんなものを描いていたのか」
美嘉「絵はこんなもの≠カゃないよ」
可南子「金にならねえことして何になるってんだ?」
美嘉「お金のためじゃないよ……」
可南子「ふん、くだらねえな」
美嘉「……姉さんが……姉さんが試合で人を痛めつけるのとは違うんだ!」
可南子「なんだと? 私は金のためじゃない! 楽しいから傭兵≠竄チてるのさ。絵なんか描いて、何が面白いって言うんだ! 形の残るものを作るなんて、私にはわからねえな!」
美嘉「……つまらないと感じるのは、姉さんが満たされているからよ」
可南子「……」
美嘉「私なんか、体が不自由だし、絵を描くことで満たされてる気がするわ」
可南子「……」
美嘉「……ごめん姉さんが戦っているのは、私のためなのに」
可南子「……金はここにおいとくぞ」
美嘉「その像は?」
可南子「お偉いさんがくれたのさ。大会で最も人をぶちのめした奴≠ノ渡すもんだとよ」

可南子「くぁ……」
美嘉「おはよう、姉さん。よく眠れた?」
可南子「ああ。久々に柔らかいベッドで寝たら調子悪いな」

コンコン

美嘉「めずらしいわね。お客なんて……」
可南子「いいから座ってろ。……?」
瞳子「汚いところだな。……これが人の住む所か?」
可南子「お……おいおい、人ん家に勝手に上がるなよ! な……何か用か!?」
瞳子「あっ、え……えーと、可南子だな……いや、可南子さんですね!?」
可南子「そ……そうだが……」
瞳子「わらわは、いや、わわ、わたしは松……」
可南子「松?」
瞳子「いいいいいいや、ま……松……松澤十子と申します!」
可南子「……」
瞳子「……」
可南子「で、その十子お嬢さんが何の用だ!?」
瞳子「仕事の依頼をしたいのですが……」
可南子「ああ? マジで?」
美嘉「暇なんでしょ? 相手してあげたら?」
可南子「……」
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