なぜなにマリみて"熱心党のユダ(中)"

乃梨子「ねえねえ、お姉さま」
志摩子「……」
乃梨子「あの、お姉さま?」
志摩子「…………」
乃梨子「聞いてますか? お姉さま」
志摩子「………………あ〜面白かった。6巻では大活躍だったわねアンデルセン神父
乃梨子「面白かったじゃなくって、人の話聞いてくださいよ」
志摩子「あら、ごめんなさいね。で、何かしら?」
乃梨子「先日、イスカリオテのユダはイエスを裏切ったって言いましたよね」
志摩子「言ったわよ。そのことを悔いて、後に自ら命を絶ったのね」
乃梨子「でも、選ばれた使徒がどうして裏切ったのでしょう?」
志摩子「有力な説は3つほどあるけど、はっきりって判らないわ」
乃梨子「3つ?」
志摩子「一つ目は、イスカリオテのユダの中にサタンが入ったという説

 さて、過越祭と言われている除酵祭が近づいていた。祭司長たちや律法学者たちは、イエスを殺すにはどうしたらよいかと考えたていた。彼らは民衆を恐れていたのである。しかし、十二人の中の一人で、イスカリオテと呼ばれるユダの中に、サタンが入った。ユダは祭司長たちや神殿守衛長たちのもとに行き、どのようにしてイエスを引き渡そうかと相談を持ちかけた。

新約聖書『ルカによる福音書』22章1節〜4節

 イエスは、「私がパン切れを浸して与えるその人だ」と答えた。それから、パン切れを浸して取り、イスカリオテのシモンの子ユダにお与えになった。ユダがパン切れを受け取ると、サタンが彼の中に入った。そこでイエスは、「しようとしていることを、今すぐ、しなさい」と彼に言われた。

新約聖書『ヨハネによる福音書』13章26節〜27節

志摩子「これを読んで、本気で悪魔が入ったと考えるのはオカルティストくらいね」
乃梨子「「中傷する者」「訴える者」という本来の意味合いが強いのかな」
志摩子「そう考えるのが妥当ね。その話は、ひとまず置いておいて。二つ目は、お金を貰うことが目的だった説

 そのとき、十二人の一人で、イスカリオテのユダという者が、祭司長たちのところへ行き、「あの男をあなたたちに引き渡せば、幾らくれますか」と言った。そこで銀貨三十枚渡すことにした。その時から、ユダはイエスを引き渡そうと、良い機会をねらっていた。

新約聖書『マタイによる福音書』26章14節〜16節

 ユダは祭司長たちや神殿守衛長たちのもとに行き、どのようにしてイエスを引き渡そうかと相談を持ちかけた。彼らは喜び、ユダに金を与えることに決めた。ユダは承諾して、群衆のいない時にイエスを引き渡そうと、良い機会をねらっていた。

新約聖書『ルカによる福音書』22章4節〜6節

志摩子「12使徒の中でイスカリオテのユダは会計係を務めていたわ。それだけに、他の11人よりはお金に対する執着も強かった。それを証明するエピソードがこれ」

 弟子の一人で、後にイエスを裏切るイスカリオテのユダが言った。「なぜ、この香油を三百デナリオンで売って、貧しい人々に施さなかったのか。」彼がこう言ったのは、貧しい人々のことを心にかけていたからではない。彼は盗人であって、金入れを預かっていながら、その中身をごまかしていたからである。

新約聖書『ヨハネによる福音書』12章4節〜6節

志摩子「イスカリオテのユダは、会計係をという務めをいいことに横領していたのよ。彼は恐らく、ナルドの香油を高く売って、その売り上げの一部をピンハネするつもりだったのね」
乃梨子「それだけを聞くと、イスカリオテのユダって、どっかの悪い政治家みたいですね」
志摩子「でも、これはおかしいわ」
乃梨子「何でですか?」
志摩子「だって、ナルドの香油は銀貨300枚なのに、主イエス様を裏切るのにたったの銀貨30枚よ。これがローマの通貨デナリオンなら30デナリオン。これは、当時の労働者の1ヶ月の賃金であり、奴隷1人分の売買価格と同じ額だわ。普通に考えたら、自分の師を売るわけだから、400とか500とか、もっとふっかけてもいいはずじゃない」
乃梨子「それもそうですねえ。お金に執着している割に、あっさり買収されてるし」
志摩子「最後の3つ目。イスカリオテのユダは熱心党の刺客だった……」

きーんこーん かーんこーん

志摩子「あら? 予鈴がなってしまったわ。続きはまた明日ね」
乃梨子「私も教室移動だから急いで戻らないと……。ああそうだ、お姉さま」
志摩子「何? 乃梨たん」
乃梨子「図書館でくすくす笑いながら『ヘルシング』読むの、やめた方がいいですよ」

つづく

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