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『Sachiko&Yumi』
第2幕 第6場 お聖堂

聖「何事も順序というものがある。聖なる儀式を終えるまで、その手をひとつに重ねることは許されない。
 天よ、願わくば、この聖なる儀式に微笑みを送りたまえ、後日、悲しみをもって我らを罰したまわざらんことを」
祐巳「アーメン。どうか聖なる言葉でふたりを結んで下さい」
聖「激しすぎる喜びには、破滅がともなうもの。火と火薬とのそれのように、勝利の絶頂で死が訪れる。甘すぎる蜜は、その甘さ故に嫌悪される。だから、ほどほどに愛しなさい。
 祥子が見えたわ。あの軽やかな足取りでは、堅い布石は未来永劫磨り減ることはないわね」
祥子「聖さま、ご機嫌よろしゅうございます」
聖「お礼は、祐巳ちゃんが私たち2人分言ってくれるはず」
祥子「では、祐巳にも。でないと、お礼の戴きすぎになりますわ」
祐巳「祥子さま、あなたの喜びと私の喜び、たとえその量は等しくとも、現す力であなたが上だというなら、どうかあなたのそのお言葉で、あたりの空気を薫らせて下さい」
祥子「心の想いというものは、言葉よりも内容によって床しいもの、まことをこそ誇れ、言葉の華を誇るものではございません。
 私の真心、私の愛は、その身代の半ば、いえ、そのまた幾分をさえも、数え上げることができないほど、大きくなってしまいました」
聖「さあさあ、私についておいで。大急ぎですませよう。失礼だけど、聖なるお聖堂の手が2人を1つにするまでは、お2人きりするわけにはいかないのでね」

次回……第3幕 第1場 マリア像前

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