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フィル・アッカマン演説

 ディアナ・ソレル閣下の勇敢なる前衛、ディアナ・カウンター全兵士に告げる。
 先刻、南の空に走った大量の流星は諸君も目撃したことと思う。あれは地球と宇宙とを結ぶ橋、ザックトレーガーが失われたことを示す光である。蛮勇に任せて発掘した航宙艦を飛ばしたミリシャが、結果を考えぬ破壊工作を仕掛けてザックトレーガーを瓦解せしめたのだ。この卑劣極まる行為によって、我々は事実上、二度と月には戻れなくなった。無論、ソレイユを始めとする一部の艦艇は地力で引力圏を離脱できるが、帰還船にはその能力がない。十万に及ぶ帰還民がこの地に釘付けになった以上、我々も彼らの安全を守るために留まり続けなくてはならないという意味では、第一次降下部隊の全員が月に戻る術を失ったと言っていいだろう。今後は増援物資も期待できず、苦しい戦いになることが予想されるが、我々は本来、この大地の土となるべく地球に降下(おり)てきたのだ。勇敢なるディアナ・カウンターの兵士諸君は、すでに不退転の覚悟を固めているものと確信している。
 しかし案ずることはない。この地球には豊かな資源がある。自給自足は十分に可能であるし、図らずもミリシャが実証してくれたように、太鼓の兵器が無数に埋もれている。過去、地球を住めない惑星に変えた悪魔の兵器であっても、我々が叡智を持って管理すれば、それは蛮族の跳梁を制し、無用な戦争を抑止する力となり得る。その発掘と整備を完了した今、我々は最後の戦いに立ち上がるべきである。
 ディアナ・ソレル閣下がここにいれば、同じ決断を下したと思う。閣下の弔い合戦ともなるこの戦いは、百年の後、繁栄の中で暮らす我々の子孫が、聖戦として語り継ぐものになるであろう。新たな統治国家をサンベルトに造り、地球圏に真の平和と繁栄を呼び込むため、諸君の一層の奮起に期待する。以上。
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