祥子「ええ、そのドレス、それが一番いいわ。
でも、ねえ、瞳子ちゃん、お願いだから、今夜は私一人っきりにしておいてね。
神様にお赦しをお願いするために、いろいろお祈りをしなきゃいけないと思うの」
江利子「どう、忙しいんじゃない? 手を貸しましょうか?」
祥子「いいえ、江利子さま、明日の式に要り用なものは、もうみんな選り出してしまいました。だからね、江利子さま、どうか私一人限りにさせて下さらない?
急な話で江利子さまも手が足りないでしょうから、瞳子ちゃんには、江利子さまのご用をさせて」
江利子「床へ入って、ゆっくりとお休みね。休まなくちゃ駄目よ」
祥子「ごきげんよう! 今度は、またいつ逢えるやら!
さあ、おいで、私の瓶!
でも、もしもこの薬の効力がなかったらどうしよう?
明日の朝はどうでも結婚という事かしら?
いや、そうはさせないわ。その時はこの懐剣で。
もしも、万が一この薬が、毒薬であったらどうしましょう?
つまり、聖さまが、私と祐巳とを先に結婚させたため、もしかして今度の結婚で、その落ち度があらわれようかとの懸念から、いっそ私を殺してしまおうという、もし謀計の毒薬だったらとしたならば?
いえ、やっぱりそんなはずはないわ。
だって、聖さまといえば、心の正しい聖者に決まっていますもの。
愛する祐巳。あなたのために、この薬を飲むわ」
次回……第4幕 第4場 小笠原家の広間